工学・技術

真空蒸着の原理と工業的応用

真空蒸着の原理と工業的応用
金属や酸化物を蒸発させて基板表面に薄膜を形成する表面処理技術「真空蒸着」の原理、歴史、光学薄膜や電子部品などの幅広い用途を解説します。

📌 主なポイント

  • 蒸着は物理蒸着(PVD)と化学蒸着(CVD)に大別される。
  • 真空蒸着の基本原理に関する初期の試みは、1857年にマイケル・ファラデーによって行われた。
  • 1930年代の油拡散式真空ポンプの実用化に伴い、レンズの反射防止膜の作成などに使用されるようになった。

蒸着(じょうちゃく、英語:vapor deposition)とは、金属や酸化物などの蒸着材料を加熱・気化あるいは昇華させ、離れた位置にある基板の表面に付着させて薄膜を形成する表面処理技術、および薄膜形成方法の一種です。蒸着は大きく分けて物理蒸着(PVD)と化学蒸着(CVD)に大別されます。本記事では主にPVDの一種である真空蒸着について解説します。

真空蒸着の原理

真空蒸着は、真空にした容器の中で蒸着材料を加熱し、気化または昇華させて基板表面に付着させる仕組みを持ちます。容器を真空にする理由は、蒸着材料の分子が基板に達する前に容器内の残存気体分子と衝突するのを防ぐため、および蒸着材料の蒸発温度を下げて作業を容易にするためです。

蒸着で鏡面化された、航空機乗員用ヘルメットのゴーグル
蒸着で鏡面化された、航空機乗員用ヘルメットのゴーグル

加熱方法には、抵抗加熱、電子ビーム、高周波誘導、レーザーなどが用いられます。使用される材料には、アルミニウム、クロム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケルなどの金属類のほか、光学特性を持つ薄膜(光学薄膜)としてSiO2、TiO2、ZrO2、MgF2といった酸化物やフッ化物があります。また、処理対象は金属だけでなく、樹脂、ガラス、紙などにも適用可能です。

歴史

真空蒸着の基本原理に関する初期の試みは、1857年にマイケル・ファラデーによって行われたとされています。その後、1930年代に入ると油拡散式真空ポンプが実用化され、主にレンズの反射防止膜の作製などに活用されるようになりました。さらに第二次世界大戦を通じて各種光学機器の需要が高まったことに伴い、真空蒸着技術も発展を遂げました。

主な用途

真空蒸着は、多様な産業分野や研究用途で広く利用されています。

  • 光学分野: メガネやカメラレンズの反射防止膜、特殊ミラーなどの光学薄膜
  • 電子・電気部品: ディスプレイ構成用の電極・半導体膜・絶縁膜、抵抗やコンデンサ、半導体集積回路などの電子部品
  • 包装材料: スナック菓子などのパッケージに用いられるアルミ蒸着フィルムなどの食品包装材
  • その他: 磁気テープ、各種装飾コーティング、走査型電子顕微鏡(SEM)やEPMA観察時のチャージアップ防止を目的とした炭素や金などのコーティング

よくある質問

真空蒸着で容器内を真空にする理由は何ですか?
蒸着材料の分子が基板に達する前に容器内の残存気体分子に衝突するのを防ぐことと、蒸着材料の蒸発温度を下げて蒸着を容易にするためです。
どのような材料が蒸着に使用されますか?
アルミニウム、金、銀、クロムなどの金属類のほか、光学薄膜用のSiO2やTiO2などの酸化物、フッ化物などが使用されます。

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参考文献

草野英二; 大工原茂樹; 岡田修; 吉野幸夫; 谷典明; 深水克郎; 植木貴久, ed. (2006), 薄膜作製技術, 東京: リアライズ理工センター, p. 89, ISBN 9784898080788