環境科学

食害:動物による資源被害の定義と対策

食害:動物による資源被害の定義と対策
食害とは、動物の摂食行動が人間にとって価値のある資源に被害を与える現象です。農業被害から文化財の虫害まで、その定義と主な事例、対策について解説します。

📌 主なポイント

  • 食害とは、動物の摂食行動が人間にとっての資源に損害を与えることを指す。
  • 農業分野ではシカ、サル、イノシシによる農作物被害が主要な課題である。
  • 文化財保存において、有機材料を食害する節足動物やネズミへの対策にはIPM(総合的病害虫管理)が活用されている。

食害(しょくがい)とは、野生動物や昆虫などの摂食行動が、人間にとって価値のある資源や財産に損害を与える現象を指す。生態系における捕食は自然な営みであるが、その対象が農作物、林業資源、あるいは文化財などの人間社会にとって重要な資源である場合、社会的な問題として「食害」と定義される。

農業および林業における食害

農林業において、野生動物による作物の食い荒らしは深刻な課題である。特にニホンジカ、ニホンザル、イノシシによる被害が顕著である。

ニホンザルに食い荒らされたキャベツ畑
ニホンザルに食い荒らされたキャベツ畑
  • ニホンジカ:植林された樹木の樹皮を剥いで食べることで樹木を枯死させる被害が報告されている。希少植物の保護においては、物理的な防護柵やカバーが用いられることがある。
  • ニホンザル:農作物を荒らすだけでなく、観光地での餌付けによる味覚の学習が、商店や車両への被害を招く事例も存在する。
  • イノシシ:高い知能と嗅覚を持ち、地中の根菜類まで掘り起こして食害する。古くから猪垣(ししがき)による防護が行われてきた。
ノカイドウを食害から守るカバー
ノカイドウを食害から守るカバー

文化財に対する食害

文化財の保存分野では、木材、紙、皮革、絹などの有機材料が、節足動物やネズミによって食害されることが大きな脅威となる。これらは「虫害」や「虫菌害」として分類され、専門的な管理が求められる。

対策としては、農業分野でも導入されている総合的病害虫管理(IPMの手法が応用されている。具体的には、燻蒸処理、低酸素処理、環境の温湿度管理、防虫網の設置などが実施される。

海洋哺乳類と漁業

漁業においては、イルカやトドなどの海洋哺乳類による魚網の破損や魚類の捕食が古くから問題視されてきた。これらは単なる食害にとどまらず、漁獲量の減少や生態系の変化と関連して議論されることが多い。

よくある質問

食害と虫害の違いは何ですか?
食害は動物全般の摂食による被害を指す広義の用語ですが、虫害は特に節足動物(昆虫など)による被害に焦点を当てた用語です。
文化財の食害を防ぐにはどのような方法がありますか?
燻蒸や低酸素処理による殺虫、防虫網の設置、温湿度管理など、IPM(総合的病害虫管理)に基づいた環境制御が行われます。
なぜ野生動物を駆除するだけでなく、防護柵を使うのですか?
天然記念物に指定されている種や、生態系への影響を考慮して駆除が困難な場合があるため、物理的な防護柵やカバーによる共存・被害防止策がとられます。

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害虫害獣IPM生態系文化財保護

参考文献

三浦定俊「美術史研究者のための保存環境学講座 その(1)」『美術誌論集』第2号、神戸大学美術史研究会、2002年。
古瀬一高ほか「絶滅危惧種ノカイドウの稚樹の生存に関する研究」『日本森林学会九州支部研究論文集 No.54』2001年。
文化財虫菌害研究所「その施工、本当に燻蒸ですか?」2023年。