シラン (水素化ケイ素): 化学的性質と製造・安全性の概要

📌 主なポイント
- ✓シラン(モノシラン)の化学式はSiH4であり、分子量は32.12である。
- ✓空気中で自然発火する性質を持ち、非常に高い引火性と危険性を有する。
- ✓加熱(420℃以上)によりケイ素と水素へ熱分解するため、半導体製造の化学蒸着(CVD)等に利用される。
シラン(英: silane)とは、ケイ素の水素化物であり、化学式SiH4、分子量32.12の無機化合物である。水素化ケイ素とも呼ばれる。特異な臭気を有する無色の気体であり、液化ガスとして入手が可能である。



ケイ素数が2や3の高級水素化物はそれぞれジシラン、トリシランと呼ばれ、それらと区別するためにSiH4はモノシランとも呼ばれる。もっとも単純な気体状のケイ素化合物であり、半導体製造における化学気相成長(CVD)などの特殊材料ガスとして広く用いられている。
化学的性質と構造
シラン中の水素原子は、中心のケイ素原子に対して正四面体の各頂点に位置している。メタンのケイ素アナログに相当するが、ケイ素と比較して水素の電気陰性度が大きいため、Si–H結合の極性はメタンのC–H結合とは逆の方向性を持つ。この逆転した極性により、シランは遷移金属と錯体を形成しやすい特徴を持つ。

Si–H結合の強さは約384 kJ/molであり、水素分子(H2)中のH–H結合よりも約20%弱い。そのため、Si–H結合を含む化合物は水素分子よりも反応性が高い。また、420 ℃以上に加熱すると、シランはケイ素と水素へと熱分解する性質があり、この反応がシリコンの化学蒸着に利用される。
安全性と危険性

シランは空気中の酸素により速やかに酸化され、水と二酸化ケイ素に分解する。シランの濃度が高い環境下では、着火源がなくとも空気中で自然発火する性質を持つ。燃焼に伴い二酸化ケイ素のフュームが発生するため、吸入しないよう注意が必要である。また、刺激性が強く、吸引した場合には肺気腫を引き起こす恐れがある。
消火の際は、ハロゲン系消火剤の使用は禁忌とされており、二酸化炭素や粉末消火剤、あるいは大量の水による冷却・消火が推奨される。
製法
実験室レベルの製法としては、ケイ化マグネシウムと塩酸または塩化アンモニウムの反応によって生成される。現在ではこの方法は副生物であるジシランの取得を目的として用いられる程度である。工業的な生産においては、ケイ素と水素を原料とする不均化反応法がもっぱら用いられている。
よくある質問
シランとはどのような物質ですか?
シランにはどのような危険性がありますか?
シランは何に利用されていますか?
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参考文献
- NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0556
- Haynes, W. M. (ed.). CRC Handbook of Chemistry and Physics.
- 野中勲,加藤芳久 (1983). “シランの物性と安全な取扱い”. 安全工学 22 (3): 163–168.