スモッグの大気汚染学的特徴と歴史的分類

📌 主なポイント
- ✓スモッグは歴史的経緯から「黒いスモッグ(ロンドン型)」と「白いスモッグ(ロサンゼルス型)」の2種類に大別される。
- ✓1952年12月に発生したロンドンスモッグ事件では、二酸化硫黄を含む濃いスモッグにより多大な人的被害が発生し、1956年大気浄化法の制定につながった。
- ✓ロサンゼルス型スモッグ(光化学スモッグ)は、自動車の排気ガスや紫外線による光化学反応によって生成される。
スモッグ(Smog)は、煙(Smoke)と霧(Fog)を組み合わせた造語であり、大気汚染物質が特定の気象条件の下で滞留することで発生する現象である。歴史的経緯や発生メカニズム、原因物質の違いから、大きく「ロンドン型スモッグ」と「ロサンゼルス型スモッグ」の2種類に分類される。

黒いスモッグ(ロンドン型スモッグ)
ロンドンの市街地では産業革命以前から、石炭の燃焼に伴う煙による大気の汚れが問題視されていた。19世紀に入ると都市化と工業化に伴い被害は深刻化し、霧と煙の微粒子が混ざり合った汚染物質が滞留することで、呼吸器疾患をはじめとする健康被害を引き起こした。
1905年には“スモッグ”という用語が登場し、同様の汚染大気に対して広く使われるようになった。このうち煤煙や二酸化硫黄を主体とし、黒色系で霧を伴うものは「黒いスモッグ」あるいは「ロンドン型スモッグ」と呼ばれる。
このタイプで最大の被害をもたらしたのが、1952年12月に発生した「ロンドンスモッグ事件」である。高濃度な二酸化硫黄を含む濃いスモッグが5日間にわたり停滞し、数千人規模の死者を出した。これを契機にイギリス議会は1956年に大気浄化法(Clean Air Act 1956)を制定するなど、本格的な排出規制が進められた。
黒いスモッグの霧には、大気中で変化した硫酸塩の微粒子(硫酸ミスト)が多く含まれており、これが肺の奥深くまで到達することで急性の健康被害をもたらす原因となった。先進国では20世紀中盤以降、燃料の主体が石炭から石油へと移行したことに伴い、黒いスモッグは次第に減少していった。
白いスモッグ(ロサンゼルス型スモッグ)
1940年代以降、自動車の普及に伴う排気ガスの増加により、従来の黒色系とは異なる白色のスモッグが現れるようになった。アメリカのロサンゼルスなどで発生し、晴れた日の昼間に発生して霧を伴わないこと、そして目・鼻・気道への刺激を特徴とすることから、「白いスモッグ」「光化学スモッグ」「ロサンゼルス型スモッグ」などと呼ばれる。
その主な原因物質は、石油由来の硫黄分に由来する硫黄酸化物や、排気ガスに含まれる窒素酸化物、炭化水素が太陽光中の紫外線を受けて反応し生成される「光化学オキシダント」である。オゾンやアルデヒド類といった気体成分、硝酸塩や硫酸塩などの微粒子から構成される。
日本では1970年7月に東京都杉並区などで発生した光化学スモッグが広く報じられ、社会問題化した。国内では各都道府県や北九州市が大気汚染注意報を発表するほか、気象庁が「スモッグ気象情報」などを発表して警戒を呼びかけている。