煙の物理的および化学的性質と多様な用途

📌 主なポイント
- ✓煙は、気体中に10µm程度未満の固体または液体の微粒子が浮遊している状態である。
- ✓火災における死亡事例の多くは、煙を吸い込むことによる呼吸困難が原因である。
- ✓発炎燃焼と燻焼状態では、生成される煙の色や有毒ガスの成分が異なる。
煙(けむり)とは、気体中に固体または液体の微粒子(おおむね10µm程度未満)が浮遊している状態を指します。その組成は燃焼するものによって異なり、単なる水蒸気からダイオキシンなどの有害な微粒子を含む場合までさまざまです。火災時の死亡事例の多くは、煙の吸入による呼吸困難が原因であり、人体への影響を考慮する際には微粒子群だけでなく気体成分も含めて評価する必要があります。

定義と霧との違い
一般に煙は、熱分解反応や燃焼反応によって生成される微粒子群が気体に浮遊している状態です。ただし、土煙のように燃焼を伴わず、埃や砂が巻き上げられることで発生するものもあります。空気中に水の粒子が浮遊している点では霧も共通していますが、霧の粒子は10µmから50µmと大きく生成過程も異なるため区別されます。ただし、煙霧質として捉えた場合、両者の境界線は必ずしも明確ではありません。
化学的および物理的性質
化学的には、煙は煤や、常温で液体の物質が一度気化した後に冷たい空気に触れて凝結した微粒子などです。発炎燃焼と燻焼状態では生成物や煙の色が異なり、酸素が十分に供給される発炎燃焼では木材などの固体炭素が遊離して黒煙を生じます。一方、酸素が不足する燻焼状態では一酸化炭素などの熱分解物がそのまま放出され、有毒ガスの危険性が高まります。
物理的には、煙の粒子は沈降、凝集、拡散する性質を持っています。粒子密度は空気よりも大きいため終端速度で沈降しますが、半径1µm以下の特に小さな粒子はブラウン運動によって互いに凝集し、大きくなるとともに沈降しやすくなります。

煙の利用と応用
煙は古くから多様な用途に利用されてきました。通信手段としての狼煙(のろし)や発煙筒のほか、狩猟や殺虫のための燻蒸、嗜好品としての喫煙、食品保存のための燻製などがあります。

また、軍事や防犯における煙幕として敵の視界を遮る目的で使用されるほか、航空ショーや特撮映画の演出にも活用されています。演劇の舞台などでは、安全性を考慮して燃焼による煙ではなく、ドライアイス等による水蒸気の析出を利用したスモークマシンが用いられることが一般的です。