塩化ナトリウムの化学的性質と産業的用途

📌 主なポイント
- ✓塩化ナトリウムの化学式は NaCl であり、式量は 58.44 である。
- ✓常温・大気圧下での融点は 800.4°C であり、溶融すると電気伝導性を示す。
- ✓海水のおよそ 2.8% を占める主成分であり、地中には岩塩としても大量に存在する。
塩化ナトリウム(えんかナトリウム、英: sodium chloride)は、化学式 NaCl で表されるナトリウムの塩化物である。一般には「塩(しお)」や「食塩」と呼ばれることが多いが、本来「食塩」は食用や医療用に調製された塩化ナトリウム製品を指す用語であり、式量はおよそ58.44である。

地球上の大半の生物、特に生体を含む哺乳類にとっては、必須ミネラルであるナトリウム源として生命維持に不可欠な物質である。天然には岩塩として産出するほか、海水の主成分(約2.8%)として世界中に広く分布しており、塩湖や温泉(食塩泉)などにも含有されている。
化学的および物理的性質
塩化ナトリウムは正塩の1種であり、結晶構造は塩化ナトリウム型構造をとる。塩化物イオンとナトリウムイオンから構成される典型的なイオン結晶であり、常温・大気圧下では無色の立方晶、または白色の固体として存在する。無臭だが、独特の塩味を有する。

純粋な塩化ナトリウムは20°Cの環境下において湿度75%まで潮解性を示さない。融点は800.4°Cであり、溶融した状態ではナトリウムイオンと塩化物イオンに電離するため電気伝導性を持つようになる。また、溶融時には揮発性を示す。

塩酸と水酸化ナトリウムの中和反応によって得ることができ、その水溶液は中性を示し電気をよく通す。温度変化による溶解度の変化が非常に小さいため、冷却による再結晶化ではなく、溶媒である水分を蒸発させるか塩化水素ガスを吹き込んで塩化物イオン濃度を高めることで結晶化させる手法が一般的に採られる。
天然資源と生産
海水中の塩化ナトリウムの存在量は膨大であるが、地層中に固体の岩塩として存在する資源も広く利用されている。世界の食塩生産量は2008年時点で2億650万トンとされ、そのおよそ36%が海水からの天日塩によるものである。
日本国内における工業塩の年間需要は約740万トンに及び、その全量をメキシコやオーストラリアなどからの天日塩輸入で賄っている。かつては国内の塩田で海水を濃縮する製法が主流であったが、現代ではイオン交換膜を用いた電気透析により効率的に工業生産されている。
主な用途
塩化ナトリウムは私たちの食生活における調味料としての利用にとどまらず、多岐にわたる分野で大量に消費されている。
- 化学工業の原料: 主要化学原料である塩素、塩酸、水酸化ナトリウムの製造に大量消費される。
- 寒剤およびブライン: 氷と混ぜることで温度を低下させる寒剤や、冷凍空調設備のブラインとして利用される。
- 食品保存: 浸透圧を利用してバクテリアの水分を奪い、増殖を防ぐ塩漬けなどの保存技術に用いられる。
- 軟水化装置の再生: 硬度成分であるカルシウムイオンやマグネシウムイオンを除去するイオン交換樹脂の再生に用いられる。
- 消火剤: 金属ナトリウムやカリウムなどの金属火災において、防湿性と流動性を持たせた塩化ナトリウムが消火剤として使用される。

よくある質問
塩化ナトリウムと食塩の違いは何ですか?
塩化ナトリウムの水への溶解度は温度によって大きく変わりますか?
日本の工業塩はどのように調達されていますか?
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参考文献
- PhysicsOpenLab. "Sodium Chloride (NaCl) Crystal". 2018年.
- 化学工業日報社編 『15509の化学商品』 2009年.
- 東京大学医学部附属病院 研究トピックス 「塩分の摂り過ぎによる血圧上昇の仕組み」.