海事法規

海上交通と航空交通におけるスターボード艇優先の原則

海上交通と航空交通におけるスターボード艇優先の原則
帆船の歴史に由来するスターボード艇優先の原則について、海上衝突予防法や航空機への影響を含めて解説する百科事典記事。

📌 主なポイント

  • 左舷に風を受ける帆船は、右舷に風を受けるスターボード艇の進路を避けなければならない。
  • 右舷の名称(スターボード)は、古代の舵取り板(ステアリングボード)を右側に装備していたことに由来する。
  • 海上衝突予防法および国際条約において、動力船を含む船舶の衝突予防に適用されている。
  • 航空機の翼端灯や乗降口の位置なども、船舶の歴史的ルールや構造に由来している。

スターボード艇優先の原則とは、二隻の帆船が互いに接近し衝突のおそれがある場合において、両船の風を受ける舷が異なるときに適用される航法規則である。左舷に風を受ける帆船は、右舷に風を受ける帆船(スターボード艇)の進路を避けなければならないと定められている。

分かりやすく言えば、進行方向の左側にある船に対しては優先権があるために直進でき、右側にある船に対しては回避しなければならないというルールである。

歴史的背景と名称の由来

かつての帆船では、船尾の右側にステアリングボード(舵取り板)を装備して操船していた。船長が舵取り板を操作する場合、右舷側に舵がある関係で、左舷に風を受けて走行するほうが船体をコントロールしやすく、衝突回避の能力が高い状況にあった。これに対し、右舷に風を受けて走行する船は操舵の自由度が制約されるため、優先権を持つこととされたのがこの原則の起源である。

画像右側が風上
画像右側が風上

右舷は英語で「スターボードサイド(starboard side)」と呼ばれ、舵取り板(steering board)に由来している。一方、左舷は「ポートサイド(port side)」と呼ばれ、港に係留する際に舵取り板がある右舷側ではなく左舷側を岸壁に付けていたことに由来する。

現代の海上法規と灯火

大航海時代に端を発するこの原則は、現代においては海上における衝突の予防のための国際規則に関する条約(COLREG条約)および各国の国内法である海上衝突予防法に継承されている。帆船のみならず動力船の間でも適用される重要なルールであり、セーリング競技などでも厳格に適用される。

船を正面から見たときの舷灯(ブーフランプ、紅灯・緑灯)とマスト灯(白色灯)
船を正面から見たときの舷灯(ブーフランプ、紅灯・緑灯)とマスト灯(白色灯)

海上では、左舷側に紅灯、右舷側(スターボード艇側)に緑灯の装備が法律で義務付けられている。これにより夜間や視界不良時でも他の船舶の位置や優先関係を識別できるようになっている。

紅灯・緑灯がそれぞれ視認される範囲。回避船からは紅灯が見える。
紅灯・緑灯がそれぞれ視認される範囲。回避船からは紅灯が見える。

航空機への影響

航空法における航法や機体の設計も、歴史的経緯から船舶のルールを強く反映している。空中でのすれ違いにおいても右側通行の原則や、自機の右側にいる航空機を優先するルールが類似して適用されている。

正面から見た ATR 72 の航空灯
正面から見た ATR 72 の航空灯
左側から見た ATR 72 の航空灯
左側から見た ATR 72 の航空灯

航空機の翼端灯も船舶の舷灯に倣っており、左翼端に赤灯、右翼端に緑灯が装備されている。また、機長が左側の席に座る傾向や、乗客の乗降口がポートサイド(左側)に位置することなども、船舶の伝統を受け継いだものである。

よくある質問

スターボード艇優先の原則とは何ですか?
二隻の帆船が接近した際、左舷に風を受ける船が、右舷に風を受ける船(スターボード艇)の進路を避けなければならないという海上交通の原則です。
なぜ右舷側の船が優先されるのですか?
古い帆船の時代、舵取り板を右舷側に装備していたため、右舷に風を受けて航行する船は操舵の自由度が制約されやすく、回避能力が低かったことに由来します。
この原則は動力船にも適用されますか?
はい。帆船に由来する原則ですが、国際条約や海上衝突予防法を通じて現代の動力船の航法としても広く適用されています。

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参考文献

日本国 海上衝突予防法12条および21条、日本航空航空実用事典、関連海事資料