自然災害

高潮のメカニズムと災害リスク

高潮のメカニズムと災害リスク
台風や低気圧によって発生する海面の高まり「高潮」のメカニズム、気象潮と天文潮の関係、および過去の災害事例について解説します。

📌 主なポイント

  • 高潮は、気圧低下による吸い上げ効果と、強風による吹き寄せ効果が主な原因である。
  • 気圧が1ヘクトパスカル低下すると、海面は約1センチメートル上昇する。
  • 天文潮(満潮)と気象潮が重なると、潮位がさらに高まり被害が拡大するリスクがある。

高潮(たかしお)とは、台風や発達した低気圧が海岸付近を通過する際に、気圧の低下や強風の影響を受けて海面が異常に上昇する現象を指します。地震や火山活動を原因とする津波とは発生メカニズムが異なり、気象現象に起因するものです。

発生のメカニズム

高潮が発生する主な要因は、気圧の低下による「吸い上げ効果」と、強風による「吹き寄せ効果」の二つです。

高潮のメカニズムを示した図
高潮のメカニズムを示した図

吸い上げ効果

海面は気圧と海水の水圧が均衡を保つことで水位が維持されています。気圧が低下すると、海面を押し下げる力が弱まるため、海面が上昇します。一般的に気圧が1ヘクトパスカル低下すると、海面は約1センチメートル上昇するとされています。

吹き寄せ効果

台風などの強風が海岸に向かって吹き付けると、海水が海岸側に押し流され、水位が上昇します。特に湾の奥部など、地形的に海水が溜まりやすい場所では、この効果が顕著に現れます。また、遠浅の海域では吹き寄せ効果がより大きくなる傾向があります。

潮汐との複合影響

高潮による水位上昇に、太陽や月の引力による「天文潮(潮汐)」が重なると、被害がさらに拡大する恐れがあります。台風の接近と満潮時刻が重なった場合、海面は極めて高いレベルに達します。これを「気象潮」と「天文潮」の重なりと呼び、過去の甚大な高潮災害の多くはこの複合的な要因によって引き起こされています。

高潮の図解
高潮の図解。平均海面に対し、通常の満潮と気象潮が重なり、最大潮位に達する様子。

過去の災害と対策

日本では、伊勢湾台風や室戸台風など、過去に多くの高潮災害が発生しています。特に東京湾、伊勢湾、大阪湾、有明海などの遠浅で入り組んだ湾岸地域は、高潮のリスクが高いとされています。近年では、地球温暖化に伴う海面上昇や、気候変動による海岸災害の激甚化への対応が国土交通省を中心に検討されています。

過去の台風による高潮水位を示すライン
室戸台風やジェーン台風時の高潮水位を示すライン。
1953年の北海大洪水
1953年の北海大洪水(オランダ・ゼーラント州)の様子。
SLOSHモデルの試験運用画像
SLOSHモデルによる高潮予測の試験運用画像。

よくある質問

高潮と津波の違いは何ですか?
高潮は台風や低気圧などの気象現象が原因で発生する海面の上昇ですが、津波は地震や火山活動、隕石の落下など、気象以外の要因で発生する海面の変動を指します。
なぜ湾の奥で高潮の被害が出やすいのですか?
強風によって海水が湾の奥へ吹き寄せられることに加え、湾内の地形が海水を溜め込みやすく、さらに湾内の固有振動が潮位を押し上げる可能性があるためです。
高潮の予測はどのように行われていますか?
気象庁や国土交通省などが、気圧や風速のデータを用いたシミュレーション(SLOSH法など)を活用し、高潮警報や注意報の発表を行っています。

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参考文献

  • 国土交通省「高潮防災のために」
  • 気象庁「知識・解説:高潮」
  • 石田啓「富山湾を襲った“寄り回り波”による高波災害の報告と対策」