物理学

弦理論の基礎と発展の歴史

弦理論の基礎と発展の歴史
物理学における弦理論(ひも理論)の基本的な概要や歴史的背景、南部陽一郎らによる発展について解説する百科事典記事。

📌 主なポイント

  • 弦理論では、素粒子を0次元の点ではなく1次元の弦として扱う。
  • 1970年に南部陽一郎、レオナルド・サスキンド、ホルガー・ベック・ニールセンが独立にハドロンの弦理論を発表した。
  • 1984年のマイケル・グリーンとジョン・シュワルツによる超弦理論の発展を経て、重力を内包する統一理論としての研究が進められている。

弦理論(げんりろん、英: string theory)とは、自然界の基本的な構成要素を0次元の「点粒子」ではなく、1次元の広がりを持つ「弦(ひも)」として捉えて記述する物理学の理論的枠組みである。「ひも理論」や「ストリング理論」とも呼ばれ、量子力学と一般相対性理論を統合する有力な候補の一つとして研究されている。

概要

従来の素粒子物理学では、電子やクォークなどの素粒子を内部構造を持たない0次元の点として扱ってきた。しかし、この点粒子モデルを重力場に応用すると、プランクスケールという極微の領域において無限大の発散が生じ、計算が破綻するという困難があった。弦理論では、粒子を1次元の弦としてモデル化することにより、この発散の困難を回避し、自然界の4つの基本相互作用(重力、電磁気力、強い相互作用、弱い相互作用)を統一的に記述する試みとして発展してきた。

歴史的背景

弦理論の起源は、1943年にヴェルナー・ハイゼンベルクが提唱したS行列理論のプログラムにまで遡ることができる。その後、1960年代を通じて強い相互作用(ハドロン)に関する多くの共鳴状態が発見され、それらを記述するための数学的モデルが模索された。

1968年、ガブリエーレ・ヴェネツィアーノはハドロンの散乱実験データを記述するオイラーのベータ関数を用いた散乱振幅(ヴェネツィアーノ振幅)を発見した。これが双対共鳴模型の端緒となった。1970年には、南部陽一郎、レオナルド・サスキンド、ホルガー・ベック・ニールセンが独立に、このオイラー形式のモデルを「振動する1次元の弦」であるという物理的解釈へと昇華させ、ハドロンの弦理論として発表した。

その後、ハドロンの強い相互作用を説明する理論としては量子色力学が主流となったため、初期の弦理論は一時的にその座を譲ることになった。しかし、1984年にマイケル・グリーンとジョン・シュワルツが超対称性を取り入れた超弦理論を発表したことで、重力を含む統一理論としての弦理論が再び脚光を浴びることとなった。

よくある質問

弦理論とは何ですか?
自然界の基本単位を0次元の点粒子ではなく、1次元の「弦(ひも)」として捉えて物理現象を説明しようとする理論的枠組みです。
弦理論は誰によって提唱されましたか?
1970年に南部陽一郎、レオナルド・サスキンド、ホルガー・ベック・ニールセンによって独立にハドロンに関する物理的解釈として発表されました。

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参考文献

  • 夏梅誠『超ひも理論への招待』日経BP社
  • 南部陽一郎『クォーク』第2版 講談社
  • 北沢良久「ストリング理論の現状」日本物理学会誌