地形学
海底谷の地形学的特徴と成因

海底谷は大陸斜面に刻まれた大規模な渓谷状の地形です。その成因や地形的特徴について、地質学的な観点から解説します。
📌 主なポイント
- ✓海底谷は大陸斜面に存在する大規模な渓谷状の地形である。
- ✓主な成因として、乱泥流(タービダイト)による侵食が支持されている。
- ✓かつては海面低下時の河川侵食による沈水説が有力であったが、深海の谷を説明できない限界がある。
海底谷(かいていこく、英: submarine canyon)は、大陸棚から大陸斜面にかけて発達する、急峻な谷状の海底地形です。多くの場合、陸上の河川の延長線上に位置し、大陸棚の縁から深海平原に向かって深く刻み込まれています。その規模は非常に大きく、全長が数百kmに達し、谷の深さが1kmを超えるものも珍しくありません。

成因に関する諸説
海底谷の形成プロセスについては、長年にわたり地質学的な議論が続いてきました。1960年代以前は、海面低下時に河川が侵食したとする「沈水説」が有力視されていましたが、現在では海底地すべりや乱泥流(タービダイト)による侵食が主要な成因であると考えられています。
沈水説
沈水説は、氷期などの海面が現在よりも著しく低い時代に、陸上の河川が大陸棚の縁まで流れ出し、谷を侵食したという考え方です。その後、海面が上昇したことで谷が水没したと説明されます。この説は、大陸棚付近の浅い海底谷の存在を説明するのには有効ですが、海面下数千メートルの深海に存在する谷の形成を説明できないという限界があります。
乱泥流説
現在、多くの海底谷の形成において支持されているのが乱泥流説です。地震や堆積物の不安定化によって発生した高密度の堆積物重力流(乱泥流)が、大陸斜面を高速で流れ下る際に海底を削り取り、谷を形成するというメカニズムです。富山深海長谷などは、このプロセスによって形成された代表的な例として知られています。

主な海底谷の例
- ハドソン谷(ニューヨーク沖):複数の海底谷が集中する地域で、その中でも特に深い谷として知られています。
- コンゴ谷(南西アフリカ沖):全長約300kmに及ぶ大規模な海底谷です。
- ウィッタード谷(ビスケー海底平原北端)
- 富山深海長谷(日本海):日本における代表的な海底谷の一つです。



よくある質問
海底谷はどのようにして作られますか?
主に海底地すべりや地震によって発生する乱泥流(タービダイト)が、大陸斜面を削り取ることで形成されると考えられています。
沈水説とはどのような説ですか?
氷期などの海面低下時に、陸上の河川が大陸棚の縁を侵食し、その後の海面上昇によって水没したとする説です。
海底谷の深さはどれくらいありますか?
海底谷の規模は様々ですが、最大で深度1km以上に達するものも存在します。
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参考文献
- 嶋村清「改訂『日本列島海底谷系図』-海底谷の地形的特徴と問題点-」『地質学雑誌』第114巻第11号、日本地質学会、2008年、560-576頁。
- 星野通平「『深海掘削計画(DSDP)の成果,青木斌・三沢良文・石川政憲,号外海洋科学,vol.1, no.1, 193-203, 1978』に対する反論」『地球科学』第34巻第1号、地学団体研究会、1980年、41-46頁。
- 産業技術総合研究所、富山大学理学部「富山深海海底谷最下流部の海底地形」『歴史地震』第18号、歴史地震研究会、2002年、221-225頁。