水源林の機能と保全
📌 主なポイント
- ✓水源林は、森林の持つ水源涵養機能(雨水の流出調整や地下水への浸透)を活用するために整備される。
- ✓浸透能の高さは、樹種よりも地域の気象条件や土壌の質に大きく依存する。
- ✓日本では森林法の保安林制度により、水源かん養保安林として森林の保全が図られている。
- ✓外国資本による森林買収については林野庁が調査を行っており、水源に影響を与える規模の買収は確認されていない。
水源林とは、森林が持つ「水源涵養機能」に着目して整備・保全される森林のことです。特に日本のように脊梁山脈を持ち、河川が短く勾配が急な地形では、雨水が陸地に滞留する時間が短いため、水資源を安定的に確保する上で水源林の役割が重要視されています。
水源涵養機能の仕組み
森林に降った雨は、樹木の樹冠や森林土壌に一時的に蓄えられ、河川への流出量や流出時間が調整されます。また、一部は地層や基岩へ浸透し、地下水として蓄積されます。森林自体が水を生産するわけではなく、樹木の生理現象により水分を消費しますが、水源林として適切に管理された流域では、渇水時にも安定した水量を維持できることが古くから知られています[1]。
水源林の能力については、広葉樹の巨木が優れているというイメージが持たれることもありますが、森林研究・整備機構の試験林における観測結果によれば、針葉樹林と広葉樹林、あるいは人工林と天然林の間で、浸透能に明確な差は確認されていません。浸透能は立木の種類よりも、地域の気象条件や長年かけて形成された土壌の質に大きく左右されます[2]。
日本における保全制度
日本では、森林法に基づく「保安林制度」により、水源の上流域にあたる森林を「水源かん養保安林」に指定しています。この指定により、伐採や開発行為が制限され、森林の保全が図られています。2006年時点で、日本の森林面積の約45%にあたる1,142万ヘクタールがこの保安林に指定されています。また、山間奥地で自発的な整備が進みにくい民有林については、森林整備センターなどが分収林制度を活用して整備を推進しています[3]。
自治体の取り組み
都市部では、安定した飲料水の確保を目的として、県境を越えて水源地域の森林を確保・保全する取り組みが行われています。例えば、東京都や神奈川県は、山梨県内の村や市に水源林を確保し、管理を行っています。かつての研究では、都市住民1人あたりの飲料水確保には300〜500平方メートル、下水処理水の希釈を含めると900〜1,000平方メートルの水源林が必要であるという目安が示されたこともあります。
森林買収に関する実態
2009年頃から、外国資本による日本の森林買収が水源を脅かすのではないかという懸念が報じられるようになりました。これを受け林野庁が実態調査を行いましたが、水源に直ちに影響を及ぼすような大規模な買収事例は確認されていません。2018年度の実績では、外国人や外国法人による買収は全国で30件、約373ヘクタールであり、日本の総森林面積と比較すると極めて限定的な規模にとどまっています[5]。
よくある質問
水源林はどのような役割を果たしていますか?
針葉樹林と広葉樹林で水源涵養能力に違いはありますか?
外国資本による森林買収は水源に影響を与えていますか?
関連記事
参考文献
- 日本学術会議「地球環境・人間生活にかかわる農業及び森林の多面的な機能の評価について」
- 村井宏、岩崎勇作「林地の水および土壌保全機能に関する研究(第1報)」『林試研究報告』第274号、1975年
- 森林総合研究所森林農地整備センター「造林に関する業務」
- 林野庁「外国資本による森林買収に関する調査の結果について」(2019年)