推力の仕組みと各移動体における推進メカニズム

📌 主なポイント
- ✓推力とは、移動する物体を進行方向に推し進める力(スラスト)のことである。
- ✓航空機やロケットは、流体を後方に加速させることでその反作用として推力を発生させる。
- ✓水中動物の推進方法には、イカなどのジェット噴射推進と、魚類やクジラ類による体幹や尾びれを使った水流利用の2種類がある。
推力(すいりょく、英語: thrust)とは、移動する物体を進行方向に推し進める力のことであり、「推進力」とも呼ばれます。物理学や工学の分野において、物体が周囲の流体や質量を後方に加速させることで、その反作用として得られる力が中心となります。また、建築分野におけるアーチの支点を外側に押し広げようとする水平方向の力や、機械などの軸方向に働く力を指す場合もありますが、本稿では移動体を進行方向に進める力について記述します。

航空機および宇宙機の推進
固定翼機は、プロペラを回転させて空気を動かすか、ジェットエンジンやロケットエンジンからの排気ガスを飛行方向とは逆向きに噴射することで前方推力を生み出します。この前方推力は、空気の質量に気流の平均速度を乗じたものに比例します。
ロケットの場合、燃焼室からノズルを通して加速された排気質量の運動量が変化する時間率と大きさが等しく、逆向きの推進力で前方に進みます。これは数学的に次のように表されます。


ここでTは生みされた推力、vは排気速度を表します。打ち上げ時の推力は、その重量に十分な余裕を加えたものより大きくなければなりません。
水中動物の推力
水中を移動する動物が推進力を得る方法には、主に2つの種類が確認されています。
1つめはジェット噴射推進に相当する方法で、後方の水を急激に押し出し、その反動で前進する仕組みです。イカやタコなどがこれに該当し、外套膜に水を取り込んで一気にしぼり出すことで急発進を行います。
2つめは体幹の後部を屈曲・伸展させ、斜め後方の水を蹴る方法です。魚の腹から尾びれまでの左右の動きや、クジラ・イルカが尾びれを上下に動かす動作がこれに当たり、身体の側面で水に衝突させることで生じる水圧差を利用して前進します。
船舶の推進メカニズム
艦船における代表的な推進装置として、スクリュープロペラを用いるプロペラ船があります。原動機で発生させた力をシャフトでプロペラに伝え、プロペラが水を後方に押し出す反作用によって推力を得ます。ただし、プロペラが生じ出す水流にはらせん状の渦やねじれが生じるため、原動機の発生させた力のすべてが純粋な推力になるわけではありません。

また、帆船の場合は風の力を推力の源とします。船の進行によって生じる進行風と真の風が合成された「みかけの風」をセイルが受け、斜め方向の力を発生させます。この力のうち船体の横方向の成分はキール(竜骨)などが受ける水からの抗力によって相殺され、縦方向の成分が推力として前進に利用されます。
