水質(すいしつ)の科学的指標と測定手法

📌 主なポイント
- ✓水質は水の物理的、化学的、生物的性質を示す指標であり、水文環境の把握に不可欠である。
- ✓電気伝導度は水中のイオン物質の総量を示すが、有機物質やケイ酸などの非イオン性溶存物質は反映されない。
- ✓水質の比較や起源の推定には、ヘキサダイアグラムやトリリニアダイアグラムなどのダイアグラムが用いられる。
- ✓水道法に基づき、色や濁度、残留塩素などは毎日、一般細菌や大腸菌などは月1回など、厳格な水質検査が規定されている。
水質(すいしつ、英語: water quality)は、水が持つ物理的、化学的、生物的な性質を示す指標である。地球上の水循環、地域の地形・地質条件、さらには人間活動の影響を強く受けて変化する。水文環境の状況を正確に把握する上で、水質の分析は水文学における野外調査の重要な化学的手法の一つとして位置づけられている。
水質の具体例と主要な測定要素
水質の評価においては、水に溶解している物質の濃度をはじめ、水温、pH、電気伝導度などが基本的な要素として挙げられる。

水温は、水に含まれる気体や固体の溶解度に影響を与えるだけでなく、水生植物や微生物の活動を左右する。また、水源や水の流路を特定する手がかりとしても重要視される。pHは、水が酸性かアルカリ性かを示す指標であり、水中の物質の溶存状態に大きな影響を与える。電気伝導度は、水中に溶解しているイオン物質の総量を把握するために利用される。純水は電気伝導性を持たないが、イオン化物質が増加するにつれて電気伝導度が高くなる性質を利用している。なお、有機物質やケイ酸などの非イオン性溶存物質は電気伝導度には反映されない。このほか、湖沼や汚濁河川の調査では溶存酸素の測定が求められるほか、透明度、透視度、水の色なども重要な測定対象となる。
水質の表現方法

水質における溶質の濃度は複数の方法で表現される。一般的な体積濃度は水1Lあたりの溶質の重量を示し、通常はmg/Lという単位が用いられる。このほか、溶液1kgあたりの溶質の重量を示す重量濃度(g/kg)や、当量濃度(me/L)が用いられることもある。
水質ダイアグラムによる分類
水の化学的特徴の概要を把握し、複数の水サンプルの類似点や相違点を比較検討するためには、各種のダイアグラムが活用される。

ヘキサダイアグラム(シュティフダイアグラム)は、縦軸の左側に陽イオン、右側に陰イオンの当量濃度を配置した図表である。左側には上からナトリウムおよびカリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンの濃度が示され、右側には塩化物イオン、炭酸水素イオン、硫酸イオンと硝酸イオンの合計濃度が示される。これにより、水質の傾向を視覚的に容易に認識できるようになる。

トリリニアダイアグラム(パイパーダイアグラム)は、中央の菱形をなすキーダイアグラムと、上下または左右に配置された2つの三角ダイアグラムから構成される。このダイアグラムは、特に水の起源や水質形成のプロセスを考察するうえで有用なツールとなる。
水質測定と調査手法
野外調査においては、水温、pH、電気伝導度の3項目が現場で直接測定されることが多い。水温の測定にはガラス棒状温度計やサーミスター温度計が使われ、pHの測定には比色法(試薬を用いる方法や試験紙を用いる方法)やpHメーターが利用される。電気伝導度には導電率計が用いられる。現場での複数機器の使用時には器差に注意し、必要に応じた補正や共洗いを行うことが重要である。
詳細な分析を実験室で行うための採水作業では、表面水、湖沼水、地下水など対象に応じて適切な採水器やポリビン、井戸、蛇口などが使い分けられる。
水道水の水質検査
日本国内の水道法においては、安全な飲用水を供給するために厳格な水質検査項目が定められている。色、濁度、残留塩素などは毎日測定される項目であり、一般細菌、大腸菌、TOC、pH、味、臭気などは月に1回測定される。さらに、シアン化物やホウ素、総トリハロメタンなどは3か月に1回といった頻度で検査が義務付けられている。多種多様な化学物質を高精度で測定するには高価な検査装置やコストがかかるため、浄水場や給水栓においては、魚類などの水生生物を用いた連続的な水質監視システムが補助的に活用されることもある。
よくある質問
水質とは何を示す指標ですか?
電気伝導度はどのような物質を測定するのに使われますか?
ヘキサダイアグラムは何のために使用されますか?
水道水の水質検査はどのくらいの頻度で行われますか?
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参考文献
- 新井正編『水環境調査の基礎』古今書院、1994年。
- 日本陸水学会編『陸水の事典』講談社、2006年。
- 田瀬則雄著「水・物質循環」、杉田倫明・田中正編『水文科学』共立出版、2009年。
- 武田育郎『よくわかる水環境と水質』オーム社、2010年。
- 山中勤著「水文」、上野健一・久田健一郎編『地球学調査・解析の基礎』古今書院、2011年。
- 厚生労働省 水道法に基づく水質検査関連資料