物理学における表面張力の基礎と物性

📌 主なポイント
- ✓表面張力は、液体や固体が表面積を最小化しようとする性質であり、界面張力の一種である。
- ✓歴史的には、トマス・ヤングが1805年に発表した論文が研究の始まりとされている。
- ✓熱力学的には、表面張力はギブス自由エネルギーやヘルムホルツ自由エネルギーを表面積で偏微分した値として定義される。
- ✓表面張力は温度が上昇すると低下し、臨界温度においてゼロになる。
表面張力(ひょうめんちょうりょく、英語: surface tension)とは、液体や固体の相がその表面積をできるだけ小さくしようとする性質であり、界面張力の一種である。定量的には単位面積当たりの表面自由エネルギーを表し、単位はmJ/m2、dyn/cm、mN/mなどが用いられる。記号には通常 ̳ や ͣ が用いられる。
ここで界面とは、ある相が他の相と接している境界を指し、一方が液体または固体であり、もう一方が気体である場合の界面を特に表面と呼ぶ。歴史的には、トマス・ヤングが1805年に発表した論文「An Essay on the Cohesion of Fluids」がその研究の端緒とされる。
定義と熱力学的主張
表面張力の概念や定義には複数のアプローチが存在する。代表的なものとして以下の説明が挙げられる。
- 機械的定義(マクスウェルの枠):コの字形の枠と可動する棒の間に張られた液体の膜を考え、可動棒に働く単位長さあたりの収縮力として定義する手法。
- 仕事量による定義:表面を単位面積だけ増大させるために必要な仕事量として定義する手法であり、A・デュプレが1869年に導入したとされる。
- 熱力学的な定義:ギブスやヘルムホルツの自由エネルギーを用いて定義する手法。熱力学的な平衡状態において、表面張力 ̳ はギブス自由エネルギー G を表面積 A で偏微分したものとして表される。
原因と理論的背景
液体中の分子は、あらゆる方向から周囲の分子による分子間力を受けて安定した状態にある。一方、表面上に位置する分子は内部の分子からは引力を受けるものの、気体側からの分子間力は極めて小さい。そのため、表面の分子は内部の分子に比べて大きな自由エネルギーを持ち、不安定な状態に置かれることになる。これが表面を最小化しようとする傾向、すなわち表面張力を生み出す原因である。
物理的性質と温度依存性
表面張力は温度の上昇に伴い低下する傾向にある。これは温度上昇により分子の熱運動が活発化するためである。温度依存性に関してはエトヴェシュの法則や片山・グッゲンハイムによる式などが知られており、臨界温度に達すると表面張力はゼロになる。また、表面張力の温度変化は、単位面積当たりのエントロピーに等しいことが熱力学的な関係式から導かれる。
関連する物理現象
濡れ
濡れとは、固体表面に接している気体が液体によって置き換えられる現象である。表面の濡れやすさは接触角 θ によって評価される。固体、液体、気体の3相が接する境界線において、液体面が固体面となす角度が接触角であり、トマス・ヤングによってその関係式が示されている。
毛管現象
毛管現象は、液体中に細い管を差し込んだ際、管内の液面が外側の自由表面よりも上昇あるいは下降する現象である。この作用は、液体が固体表面を濡らす性質の強さや、管の隙間の狭さに依存する。