航空技術

持続可能な航空燃料(SAF)の概要と技術的背景

持続可能な航空燃料(SAF)の概要と技術的背景
航空業界の脱炭素化に向けた鍵となる持続可能な航空燃料(SAF)について、その定義、認証基準、製造プロセス、および日本国内の取り組みを解説します。

📌 主なポイント

  • SAFは、従来のジェット燃料と比較してライフサイクルでの温室効果ガス排出量を大幅に削減できる。
  • 航空機で使用されるSAFは、ASTMインターナショナルによる安全・性能規格(ASTM D7566)への適合が必須である。
  • 日本政府は、国内航空燃料の10%を2030年までにSAFに置き換える目標を掲げている。

持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel、以下SAF)は、従来の化石燃料由来のジェット燃料に代わる、環境負荷を低減した航空燃料の総称です。航空業界におけるカーボンニュートラル実現に向けた主要な手段として、世界的に導入が進められています。

オスロ空港でのSAF提供
オスロ空港(OSL)は、2016年よりSAFの提供を開始した国際空港の一つです。

定義と認証

SAFは、バイオマスや廃食油などの持続可能な原料から製造される燃料です。航空機での使用には、ASTMインターナショナルが定める安全および性能基準(ASTM D7566など)を満たす必要があります。また、環境面での持続可能性を証明するため、持続可能なバイオマテリアル円卓会議(RSB)などの第三者機関による認証が重要視されています。

製造プロセスと規格

ASTM D7566規格では、複数の製造プロセスが認められています。これには、フィッシャー・トロプシュ法(FT-SPK)、水素化処理されたエステルと脂肪酸から製造される燃料(HEFA-SPK)、アルコールからジェット燃料を生成するプロセス(ATJ-SPK)などが含まれます。これらのプロセスは、原料の調達から燃焼までのライフサイクル全体で、従来のジェット燃料と比較して温室効果ガス排出量を大幅に削減することを目指しています。

国際的な規制と取り組み

国際民間航空機関(ICAO)は、国際航空部門の環境目標として、燃料効率の改善や「国際民間航空のためのカーボン・オフセット及び削減スキーム(CORSIA)」を通じた排出削減を推進しています。欧州連合(EU)では、空港でのSAF混合率を2030年までに6%、2050年までに85%まで引き上げる法案が策定されるなど、規制を通じた普及が加速しています。

日本における展開

日本国内でも、航空会社やエネルギー関連企業が連携し、SAFの導入と国産化に向けた取り組みが進んでいます。全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)は、定期便でのSAF使用実績を積み重ねており、2021年には共同で「2050年航空輸送におけるCO2排出実質ゼロへ向けて」というレポートを策定しました。また、2022年には業界横断的な新団体「ACT FOR SKY」が設立され、国産SAFの量産化に向けたサプライチェーンの構築が図られています。

よくある質問

SAFとは何ですか?
持続可能な航空燃料(Sustainable Aviation Fuel)の略称で、廃食油やバイオマスなどの持続可能な原料から製造されるジェット燃料のことです。
なぜSAFが必要なのですか?
航空業界の脱炭素化(カーボンニュートラル)を実現し、気候変動への影響を低減するために不可欠な技術とされています。
SAFは従来の燃料と混ぜて使えますか?
はい、現在のSAFは既存の航空機エンジンや給油インフラをそのまま利用できる「ドロップイン燃料」として設計されています。

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参考文献

  • ASTM International, "Aviation Fuel Standard Takes Flight", 2011.
  • 国際エネルギー機関 (IEA), "Aviation", 2025.
  • 日本航空・全日本空輸, "2050年航空輸送におけるCO2排出実質ゼロへ向けて", 2021.
  • 経済産業省, "国産SAFを使用した本邦航空会社によるフライトを実施しました", 2021.