数学的対象の概念と存在論
📌 主なポイント
- ✓数学的対象とは、数学および数学の哲学において扱われる抽象的対象である。
- ✓カントールの枠組みをはじめとする集合論的アプローチでは、数学的対象を集合によって定義することが試みられてきた。
- ✓圏論においては、対象とそれらの間の射を用いて抽象的な数学的構造が記述される。
数学および数学の哲学において、数学的対象(すうがくてきたいしょう、英: mathematical object)とは、数学的考察の過程において生じる抽象的対象を指す概念である。
概要と具体例
数学の各分科において、扱われる数学的対象は多岐にわたる。一般的な例としては、数、順列、分割、行列、集合、関数、および関係などが挙げられる。幾何学においては、点、線、三角形、円、球、多面体、位相空間、多様体などが数学的対象とされる。また代数学においては、群、環、体、格子、束などが対象として扱われる。さらに圏論における圏は、複数の数学的対象を一斉に生じさせるものであるとともに、それ自体がひとつの数学的対象として研究される。
カントールの枠組みと集合論的還元
20世紀の転換期におけるゲオルク・カントールの業績により、全ての数学的対象は集合によって定義できるという観点がもたらされた。例えば、2を法とする整数の群 $Z_2$ は二つの要素を持った集合として表せるように思われるが、群としての和や反数の演算、加法単位元といった付加構造を考慮するためには、単なる集合ではなく四つ組として規定し、それをさらに集合として表すいくつかの慣習を用いる必要がある。
このアプローチを巡っては、数学の存在論が実際の実践や教育法を反映すべきであるかという哲学的な問いが生じる。実際の数学の教科書や教育において、このような集合への厳密な符号化が明示的に行われることは稀であるため、存在論が実践を反映するべきであるという立場からは、数学的対象をこの方法で単純に集合へ還元することに対する議論が存在する。
数学基礎論とモデル理論
一方で、数学の内部無矛盾性を成立させる観点からは、数学的対象を実際の実践とは切り離して、単一の方法(例えば集合として)で定義できることが重視される。これは数学基礎論によって取られてきた立場であり、パラドックスの回避に高い優先順位が置かれてきた。
こうした集合と数学的対象の同定における緊張関係を和らげるアプローチとして、モデル理論の基礎がある。この観点では、数学的対象は述語論理の言語で表現された形式理論の公理を満たす実体として捉えられる。
圏論的アプローチ
より抽象的な枠組みを提供するのが圏論である。圏論では、集合を対象とし、その上の演算を対象間の射として抽象化する。このレベルにおける数学的対象はグラフの頂点へ還元され、射はそのグラフの辺として対象間の変換を抽象化する。圏は公理的理論のモデルや準同型として生じるほか、それ自身で意味を持つ抽象的対象としても研究される。
よくある質問
数学的対象とは何ですか?
集合論における数学的対象の扱いはどのようなものですか?
圏論では数学的対象はどのように捉えられますか?
関連記事
参考文献
- Azzouni, J., 1994. Metaphysical Myths, Mathematical Practice. Cambridge University Press.
- Burgess, John, and Rosen, Gideon, 1997. A Subject with No Object. Oxford Univ. Press.
- Stewart Shapiro, 2000. Thinking about mathematics: The philosophy of mathematics. Oxford University Press.