日本で生まれた独自の発明楽器:大正琴の歴史と構造

📌 主なポイント
- ✓大正琴は1912年(大正元年)に名古屋で森田吾郎によって発明された。
- ✓タイプライターのキー構造と二弦琴を組み合わせて考案された。
- ✓五線譜ではなく専用の数字譜を用いることで、初心者でも容易に演奏できる特徴を持つ。
大正琴(たいしょうごと)は、木製の中空の胴に金属弦を張り、ピアノのような鍵盤を備えた日本の弦楽器の一種である。左手で鍵盤を押さえ、右手のピック(義甲)で弦を弾いて演奏する。

歴史と発祥
1912年(大正元年)、名古屋・大須の森田屋旅館の長男である森田吾郎(本名:川口仁三郎)が、二弦琴をベースにタイプライターのキー構造から着想を得て発明した。鍵盤の配列はピアノと同様になっており、初心者でも比較的容易に正確な音高を出せることから、大正時代に家庭用楽器として急速に普及した。

発明の地である名古屋市大須の大須観音の境内には、「大正琴発祥之地」の石碑が建立されている。
構造と仕様
発明当初の音域は2オクターブであったが、1970年代から1980年代にかけてアルト、テナー、ベースといった低音域用の大正琴が開発された。弦の本数は、二弦琴を起源とすることから当初は同音の2本が基本であったが、時代の変遷とともに弦の数や組み合わせが多様化した。
また、発売当初から大正琴専用の数字譜が用意されており、五線譜が読めない人でも演奏できるよう配慮されている。さらに、アンプを通して音を増幅させる電気大正琴や、電子的な音色変化が可能な電子大正琴、立奏を可能にするモデルなども開発されている。

奏法
基本的な奏法としては、左手でキーを押さえ、右手のピックで手前から向こう側へ弾く「向こう弾き」が用いられる。その他にも、ピックを素早く前後させて長音を出す「トレモロ奏法」や、逆方向に弾く「返し弾き」などがある。
国内外への広まり
音楽学者の小泉文夫らが「日本人が開発した唯一のオリジナルの楽器」として言及するなど、日本独自の音楽文化として位置づけられている。日本国内のみならず、海外へも伝播しており、インドでは「ブルブル・タラング」や「インディアン・バンジョー」と呼ばれるほか、東アフリカのケニアやタンザニアではタアラブ音楽の主要な楽器「タシュコタ」として親しまれている。