民俗学・伝統工芸

タパ:オセアニアの伝統的な樹皮布

タパ:オセアニアの伝統的な樹皮布
オセアニアのポリネシア、メラネシア、ミクロネシアで伝統的に作られる樹皮布「タパ」の歴史、原料、製法、地域ごとの名称について解説します。

📌 主なポイント

  • タパは、オセアニアのポリネシア、メラネシア、ミクロネシアで伝統的に作られる樹皮布である。
  • 糸を織る工程がないため、不織布に分類される。
  • 原料には主にカジノキなどの樹皮の内皮が使用される。
  • 地域によってカパ、ンガトゥ、マシ、シアポなど様々な名称で呼ばれる。

タパ(タヒチ語: tapa)は、オセアニアのポリネシア、メラネシア、ミクロネシアの地域において伝統的に制作されてきた樹皮布である。糸を織る工程を経ずに作られるため、不織布の一種に分類される。

18世紀ハワイのタパ(カパ)
18世紀ハワイのタパ(カパ)

一般には「タパ」と総称されるが、これは狭義にはタヒチ島近傍のマンガレヴァ島における呼称であり、地域や言語によって異なる様々な名称が存在する。ハワイでは「カパ(kapa)」、トンガでは「ンガトゥ(ngatu)」、フィジーでは「マシ(masi)」、サモアでは「シアポ(siapo)」などと呼ばれる。

原料と起源

タパの主な原料には、クワ科のカジノキのほか、パンノキやイチジクなどの樹皮が用いられるが、中でもカジノキが中心的な役割を果たしている。カジノキは、かつての移民の移動と栽培に伴ってポリネシア全域へと広がっていった。

タパ打ち
タパ打ち

タパおよびその制作道具は植物性素材で構成されているため経年劣化しやすく、考古学的な資料は限られている。しかし、ペルーで出土したタパの断片は紀元前4000年頃のものとされる。また、日本においても正倉院に「木綿(ゆふ)」と呼ばれるタパが伝存しており、古くは幣帛(へいはく)として使用されていたことが知られている。

製法

フィジーをはじめとするポリネシア地域のタパはおおむね共通した工程で制作される。

  • 樹木から樹皮を剥ぎ取る。
  • 水に浸して柔らかくする。
  • 表面の粗い部分を削り取り、内皮のみを残す。
  • 専用の棒で叩いて引き延ばす(タパ打ち)。
  • 天日干しにより乾燥させる。
  • 大判の布を作る必要がある場合は糊を用いてつなぎ合わせる。
  • 型染めなどの技法を用いて装飾や染色を施す。

一方、ニューギニアなどメラネシア地域のタパは、複数の樹皮を接合することはせず、1本の樹皮から1枚の布として仕上げられる。彩色についても、各氏族に継承されてきた特定のモチーフや模様を手描きによって施すのが特徴である。

フィジー王室のMasi(19世紀)
フィジー王室のMasi(19世紀)
フィジーの婚礼衣装(19世紀)
フィジーの婚礼衣装(19世紀)
パプアニューギニアのngatu
パプアニューギニアのngatu
サモアのSiapo(1890年代)
サモアのSiapo(1890年代)
ハワイのKapa(1890年代以前に収集)
ハワイのKapa(1890年代以前に収集)

よくある質問

タパとはどのようなものですか?
オセアニアのポリネシア、メラネシア、ミクロネシアで伝統的に作られている樹皮布であり、織る工程がないため不織布に分類されます。
タパの主な原料は何ですか?
クワ科のカジノキのほか、パンノキやイチジクなどの樹皮が用いられ、特にカジノキが主に使用されます。
地域による呼び方の違いはありますか?
はい、ハワイでは「カパ」、トンガでは「ンガトゥ」、フィジーでは「マシ」、サモアでは「シアポ」などと呼ばれています。

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参考文献

  1. 福本繁樹、長野五郎、坂本勇 『織物以前:タパとフェルト』 LIXIL出版 2017 ISBN 978-4-86480-519-3 pp.40,65-73.