物理学
終端速度の物理的原理と計算手法

物体が流体中を落下する際に到達する終端速度の定義、運動方程式、およびレイノルズ数による抗力係数の変化について解説します。
📌 主なポイント
- ✓終端速度は、重力などの体積力と流体抵抗が釣り合った時に生じる一定速度である。
- ✓抗力係数はレイノルズ数によって変化し、流れの領域(層流・中間・乱流)に応じて異なる式が適用される。
- ✓液滴の場合は剛体球と異なり、変形や内部流動の影響を受けるため、補正を加えた計算式が必要となる。
終端速度(しゅうたんそくど、英: terminal velocity)とは、物体が重力や遠心力などの体積力を受けながら流体中を移動する際、その物体に働く抗力(流体抵抗)と体積力がつり合い、速度が一定となった状態の速度を指します。終末速度や終末沈降速度とも呼ばれます。
運動方程式
流体中で物体が落下する場合、重力、浮力、および速度に依存する抗力が作用します。物体の運動方程式は以下のように表されます。

ここで、物体の体積Vおよび投影面積Sは、直径dを用いて以下のように定義されます。


抗力係数とレイノルズ数
抗力係数cDは、流体の流れの状態を示す無次元数であるレイノルズ数Reに依存します。レイノルズ数は物体の速度u、流体の密度ρf、粘性係数μfを用いて算出されます。

レイノルズ数の範囲に応じて、流れは以下のように分類されます。
- ストークス域(層流域): Re < 2
- アレン域(中間域): 2 < Re < 500
- ニュートン域(乱流域): 500 < Re < 105

終端速度の解
加速度がゼロとなる終端速度utは、運動方程式を解くことで求められます。各領域における終端速度の計算式は以下の通りです。

液滴の挙動
液滴は剛体球とは異なり、運動中に形状が変形したり内部流動が生じたりするため、解析がより複雑になります。径が小さい場合は剛体球の式に近い挙動を示しますが、径が大きくなると扁平化し、終端速度は剛体球よりも低くなる傾向があります。

よくある質問
終端速度はなぜ一定になるのですか?
物体が落下するにつれて速度が増すと、流体から受ける抗力も増大します。最終的に抗力が重力と釣り合うと、合力がゼロとなり加速度がなくなるため、速度が一定に保たれます。
レイノルズ数とは何ですか?
流体の慣性力と粘性力の比を表す無次元数です。この値によって、流体の流れが層流であるか乱流であるかを判断します。
液滴の終端速度が剛体球と異なるのはなぜですか?
液滴は落下中に形状が扁平に変形することや、液滴内部で流動が発生することでエネルギーが消費されるため、剛体球とは異なる抵抗特性を示します。
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参考文献
- 戸田盛和『力学』岩波書店、1982年、54頁。
- 浅野康一『物質移動の基礎と応用』丸善、2004年、117頁。
- 粉体工学会編『液相中の粒子分散・凝集と分離操作』日刊工業新聞社、2010年、124頁。
- Egon Krause他『流体力学』シュプリンガージャパン、2008年、323-325頁。
- 井伊谷鋼一「球形粒子の沈降速度について」『粉体工学研究会誌』第3巻第1号、1966年、420-423頁。