物理学
熱力学的平衡の概念と定義

熱力学的平衡とは、熱力学系においてマクロな状態量が時間的に変化せず、系全体が安定している状態を指します。その定義と物理的性質を解説します。
📌 主なポイント
- ✓熱力学的平衡は、熱的、力学的、化学的平衡が同時に達成された状態である。
- ✓平衡状態にある系は、マクロな状態量が時間的に変化しない。
- ✓統計力学において、熱力学的平衡は系が最大エントロピーの状態にあることと関連付けられる。
熱力学的平衡(ねつりきがくてきへいこう、英: thermodynamic equilibrium)とは、熱力学系において、系を記述するマクロな状態量(温度、圧力、密度など)が時間的に変化せず、系全体が安定している状態を指します。この状態にある系は、外部との相互作用がない限り、自発的に状態が変化することはありません。
概要
熱力学的平衡は、単なる静止状態とは異なります。系が熱力学的平衡にあるためには、以下の複数の平衡条件が同時に満たされている必要があります。
- 熱的平衡:系内の各部、および系と外界との間で温度差がなく、熱の正味の移動がない状態。
- 力学的平衡:系内の各部、および系と外界との間で圧力差がなく、力学的な仕事の正味の移動がない状態。
- 化学的平衡:系内の化学ポテンシャルが均一であり、化学反応や物質の移動による正味の変化がない状態。
これらの条件が満たされることで、系はマクロな視点において時間的に不変な状態を維持します。
物理的性質
熱力学的平衡にある系は、ギブズの自由エネルギーやヘルムホルツの自由エネルギーなどの熱力学ポテンシャルが、与えられた条件下で最小値をとるという性質を持ちます。これは、系がエネルギー的に最も安定な状態を選択していることを示唆しています。また、統計力学の観点からは、系が最大エントロピーの状態にあることと等価であると解釈されます。
歴史的背景
熱力学的平衡の概念は、19世紀の熱力学の発展とともに確立されました。特にJ.W.ギブズによる不均一な物質系の平衡に関する研究は、化学熱力学の基礎を築き、現代の物理化学における平衡論の出発点となっています。
よくある質問
熱力学的平衡と定常状態の違いは何ですか?
熱力学的平衡は外部との相互作用なしに状態が不変であるのに対し、定常状態は外部からエネルギーや物質の流入・流出がある中で、マクロな状態量が時間的に変化しない状態を指します。
系が熱力学的平衡にあるとき、内部で分子運動は止まっていますか?
いいえ、止まっていません。熱力学的平衡はマクロな状態が不変であることを意味しますが、ミクロな視点では分子は常に熱運動を続けています。
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参考文献
- M. W. Zemansky, "Heat and Thermodynamics (5'th ed.)", McGraw-Hill(1957).
- J. W. Gibbs, "On the Equilibrium of Heterogeneous Substances", 1875-1878.
- Moore, W. J 著、藤代亮一 訳『ムーア 物理化学』-上-(第4版)、東京化学同人、1974年。
- 芝亀吉『熱力学』岩波書店、1950年。