物理学

熱力学における状態の概念

熱力学における状態の概念
熱力学における「状態」の定義と、系を記述するために必要な状態量、状態方程式、および熱平衡状態の基礎について解説します。

📌 主なポイント

  • 熱平衡状態では、系のマクロな物理量は時間的に変化しない。
  • 状態量は、系の大きさに依存する示量性と、依存しない示強性に分類される。
  • 状態方程式は、系を構成する状態量間の数学的な関係を記述する。
  • 状態の関数は現在の状態のみに依存するが、仕事や熱などの過程関数は経路に依存する。

熱力学において「状態」とは、ある系が特定の条件下でどのような物理的性質を持っているかを示す概念です。系が熱平衡状態にあるとき、その状態は少数の独立した変数(状態量)によって一意に決定されます。

熱平衡状態

熱平衡状態とは、系のマクロな物理量が時間的に変化せず、かつ系内部で熱的・力学的・化学的な流れが生じていない状態を指します。この状態にある系は、外部環境との相互作用がない限り、その性質を維持し続けます。

状態量と状態方程式

系を記述するために用いられる物理量を状態量と呼びます。状態量は、系の大きさに依存する「示量性状態量」(体積、粒子数、内部エネルギーなど)と、系の大きさに依存しない「示強性状態量」(温度、圧力、化学ポテンシャルなど)に分類されます。

これらの状態量の間には、特定の関係式が存在します。これを状態方程式と呼び、例えば理想気体においては pV = nRT という形で表されます。系が平衡状態にある場合、独立な状態量を指定することで、他のすべての状態量が決定されます。

状態の関数と過程

系がある平衡状態から別の平衡状態へ変化することを「過程」と呼びます。状態の関数とは、系の現在の状態のみによって値が決まる物理量(内部エネルギー、エントロピーなど)を指します。一方、仕事や熱のように、どのような過程を経て変化したかという経路に依存する量は「過程関数」と呼ばれ、状態量とは区別されます。

よくある質問

熱平衡状態とは何ですか?
系内部でマクロな物理量が時間的に変化せず、熱的、力学的、化学的な流れが停止している安定した状態のことです。
示量性と示強性の違いは何ですか?
示量性状態量は体積や質量のように系の大きさに比例して変化する量であり、示強性状態量は温度や圧力のように系の大きさに関わらず一定の値を示す量です。
状態量と過程関数の違いは何ですか?
状態量は現在の状態のみで決まる値ですが、過程関数(仕事や熱など)は系がどのような経路をたどって変化したかによって値が変わる量です。

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参考文献

  • 田崎晴明 (2017). 「熱平衡状態とはなにか?」『日本物理学会誌』72(1): 5.
  • ランダウ, リフシッツ (1966). 『統計物理学 上』第2版, 岩波書店.
  • Peter Atkins; Julio de Paula (2009). 『アトキンス物理化学 上』第8版, 東京化学同人.
  • 久保亮五 ほか編 (1961). 『熱学・統計力学 : 大学演習』裳華房.
  • Benjamin Widom (2005). 『化学系の統計力学入門』化学同人.
  • 日秋俊彦, 清水繁, 児玉大輔 (2025). 『基礎からの化学熱力学』朝倉書店.