地球大気の層構造における熱圏の特性と組成

📌 主なポイント
- ✓熱圏は中間圏の外側に位置し、下界との境界は高度約80kmの中間圏界面である。
- ✓熱圏の温度は分子の平均運動量で定義されるが、大気密度が極めて低いため熱量は小さい。
- ✓高度が上がるにつれて重力分離が起こり、原子状酸素やヘリウムの割合が増加する。
熱圏(ねつけん、英: thermosphere)は、地球の大気の鉛直構造において中間圏の外側に位置する層である。下方は高度約80kmの中間圏界面を境とし、上方は外気圏へと移行する熱圏界面に至る。名称の由来である「thermo」はギリシャ語で熱を意味する。
温度特性と物理的性質
熱圏は、太陽からの短波長の電磁波や磁気圏で加速された電子のエネルギーを吸収するため、温度が高いことが特徴である。太陽活動の状況などにより、温度は非常に高い数値に達することがある。
この熱圏の温度は、気体分子の平均運動量に基づいて定義されている。ただし、分子の密度が地表付近と比較して極めて低いため、実際にその領域に存在しても大気から受ける熱量は小さく、一般的な意味での「熱さ」は感じられないとされている。
大気の組成と重力分離
中間圏より下方の層では混合作用により大気中の分子比率は一様であるが、熱圏では大気密度が低いために十分な混合が進まず、重力による分離が生じる。分子量の大きい物質が下方に留まるため、高度80kmから100km付近では窒素が主成分となるが、高度が上がるにつれて原子状酸素やヘリウムの割合が増加する。

また、高度が高い領域ほど、太陽活動の変動による大気密度の変化が大きくなる。高度によっては密度が大きく変動することがあり、これは人工衛星の軌道減衰に対して影響を及ぼす要因となる。
電離層と関連現象
熱圏内の気体分子は、太陽からの電磁波や磁気圏からの電子のエネルギーによって一部が電離している。この電離したイオンと電子が層を形成している領域が電離層である。また、高緯度地方においては、磁気圏から流入する電子などが熱圏の大気分子と衝突し、励起や電離を引き起こすことでオーロラの発光現象が見られる。
なお、大気圏と宇宙空間の境界線として一般的に用いられるカーマン・ラインは、下部熱圏に相当する高度100kmに設定されている。