トマス・クーン:20世紀の科学史家・科学哲学者

📌 主なポイント
- ✓1922年7月18日にアメリカ・オハイオ州シンシナティで生まれた。
- ✓ハーバード大学で物理学を専攻し、1949年に同大学で物理学の博士号を取得した。
- ✓1962年に主著『科学革命の構造』を発表し、「パラダイム」や「科学革命」という概念を提唱した。
- ✓カリフォルニア大学バークレー校、プリンストン大学、マサチューセッツ工科大学で教授を務めた。
トーマス・サミュエル・クーン(Thomas Samuel Kuhn、1922年7月18日 - 1996年6月17日)は、アメリカ合衆国の哲学者、科学史家。科学の歴史的発展に関する独自のモデルを提示し、現代の科学哲学に多大な影響を与えた人物である。

生涯と経歴
1922年、アメリカ合衆国オハイオ州シンシナティ市にて、ドイツ系ユダヤ人移民の家庭に生まれた。ハーバード大学で物理学を専攻し、1943年に学士号(B.S.)、1946年に修士号(M.S.)を取得した。大学院在学中に科学史・科学哲学への関心を深めたものの、博士号(Ph.D.)は1949年に物理学の分野で取得している。ハーバード大学在学中には、物理学者のジョン・ヴァン・ヴレックの指導を受けた。
博士号取得後、カリフォルニア大学バークレー校の教授となり、哲学部と歴史学部の両方で科学史と科学哲学を講じた。1964年からはプリンストン大学の教授を務め、1969年から1970年にかけてはアメリカ科学史学会の会長に就任した。さらに1979年からはマサチューセッツ工科大学(MIT)の教授を歴任した。1994年に肺癌と診断され、1996年6月17日に逝去した。
主要な業績と概念
クーンの最も著名な業績は、1962年に刊行された主著『科学革命の構造』である。同書において彼は、科学の発展が単なる知識の累積的な蓄積ではなく、断続的に発生する革命的な変化、すなわち「パラダイムシフト」を伴うものであると主張した。
彼の提唱した「パラダイム」や「科学革命」といった概念は、科学史や科学哲学の枠組みを超えて、社会科学、人文科学、さらには一般的な議論にまで広く浸透することになった。しかし、その過程で概念の意図された範囲を超えた拡大解釈や曖昧さが指摘されることもあった。これを受け、クーンはのちに定義をより厳密にした「専門母型(disciplinary matrix)」という概念を提唱し、著作の改訂や加筆を行っている。
おもな著作
- 『コペルニクス革命――科学思想史序説』(1957年)
- 『科学革命の構造』(1962年)
- 『本質的緊張――科学における伝統と革新』(1977年)
- 『構造以来の道――哲学論集 1970-1993』(2002年遺稿集)