気象学者

トール・ベルシェロン:近代気象学と雲物理学の先駆者

トール・ベルシェロン:近代気象学と雲物理学の先駆者
スウェーデンの気象学者トール・ベルシェロンの生涯と業績を解説。ベルゲン地球物理学研究所での研究や降水過程(ベルシェロン過程)について網羅。

📌 主なポイント

  • トール・ベルシェロンは1891年8月15日にイギリスのサリー州グラッドストーンで生まれた。
  • ノルウェー・ベルゲン地球物理学研究所に参画し、ノルウェー学派の気象学者として活躍した。
  • 過冷却水滴と氷晶の共存に基づく降水メカニズム(ベルシェロン過程)を提唱した。

トール・ベルシェロン(Tor Harold Percival Bergeron、1891年8月15日 - 1977年6月13日)は、スウェーデンの気象学者である。ノルウェー学派の中心人物の1人として知られ、雲物理学の発展に絶大な貢献を残したことから「雲物理学の父」と称される。

トール・ベルシェロンの肖像画あるいは関連する資料画像
トール・ベルシェロンの肖像画あるいは関連する資料画像

生涯と研究活動

イギリス・イングランドのサリー州グラッドストーンに生まれたベルシェロンは、幼少期から気象観測に深い関心を抱き、生涯を通じて雲の観測を続けた。その後、母の紹介を通じてスウェーデンの気象台長であり極地探検家であったエークホルムに師事する。

1918年、ヴィルヘルム・ビヤークネスが前年に開設したノルウェーのベルゲン地球物理学研究所に加わった。彼はここで、カール=グスタフ・ロスビーらとともに20世紀近代気象学の基礎を築いた「ノルウェー学派」の一員として頭角を現した。

主な業績とベルシェロン過程

1928年、ベルシェロンは「大気の三次元解析」を発表して前線理論や気団の基礎を固め、学位を取得した。続いて1930年には気団の定義と分類を行い、この成果はのちに日本など世界各地の気象解析にも援用された。

彼の最も著名な業績は、1933年に発表し1935年の国際測地学・地球物理学連合(IUGG)で正式に発表した降水粒子の生成理論である。過冷却水滴と氷晶が共存する雲の中で、飽和水蒸気圧の差によって過冷却水滴が蒸発し、それが氷晶の周囲に昇華して氷晶が急速に成長することで雨粒や雪粒が形成されるとするこのメカニズムは、のちに「ベルシェロン過程」として広く知られるようになった。この理論は、中緯度および高緯度地方における降水現象の理解に不可欠な基礎となり、のちに人工降雨の技術などにも応用された。

晩年の1965年には、北海道札幌市で開催された雲物理学の国際会議に出席するために初来日し、開会演説を行っている。1949年にはサイモンズ・ゴールドメダルを受賞した。

よくある質問

トール・ベルシェロンとはどのような人物ですか?
スウェーデンの気象学者であり、ノルウェー学派の1人として前線理論や雲物理学の発展に大きく寄与した人物です。
ベルシェロン過程とは何ですか?
雲の中に過冷却水滴と氷晶が共存する際、両者の飽和水蒸気圧の差によって過冷却水滴から水分が氷晶へと移動し、氷晶が急速に成長することで降水粒子が形作られるメカニズムのことです。
ベルシェロンが来日したことはありますか?
はい。1965年に北海道札幌市で開催された雲物理学の国際会議に出席するために来日し、開会演説を行っています。

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参考文献

  • 高橋浩一郎・内田英治・新田尚『気象学百年史―気象学の近代史を探究する―』東京堂出版。
  • 山岸米二郎『気象学入門―天気図からわかる気象の仕組み―』オーム社。
  • 吉野正敏・浅井冨雄・河村武・設楽寛・新田尚・前島郁雄 編『気候学・気象学辞典』二宮書店。