物理化学
三重点:物質の三相が共存する熱力学的平衡状態

三重点とは、純物質の気相・液相・固相の三つの相が熱力学的に平衡状態で共存する温度と圧力のことです。その定義や物理的性質、水の三重点の重要性について解説します。
📌 主なポイント
- ✓三重点は、純物質の気相・液相・固相が熱力学的に平衡状態で共存する温度と圧力の点である。
- ✓ギブズの相律により、1成分3相系である三重点の自由度は0であり、温度と圧力は固有の値に決まる。
- ✓水の三重点は 273.16 K (0.01 °C)、圧力約 611.657 Pa である。
- ✓三重点は国際温度目盛(ITS-90)において重要な温度定点として利用されている。
三重点(さんじゅうてん、英: triple point)とは、純物質において気相、液相、固相の三つの相が熱力学的平衡状態で共存する温度および圧力のことです。単に「三重点」と呼ぶ場合、通常はこの三相が共存する点を指します。

相律と物理的性質
ギブズの相律によれば、1成分系で3つの相が共存する場合、自由度は0となります。そのため、沸点や融点とは異なり、純物質の三重点は温度と圧力がただ一点に固定されます。温度-圧力相図上では、蒸気圧曲線、融解曲線、昇華曲線の3本が交わる点が三重点に相当します。
三重点圧力より低い圧力下では、熱力学的に安定な液相は存在しません。ただし、過冷却水のように準安定相として液相が一時的に存在することは可能です。
水の三重点
水の三重点は、かつて国際単位系(SI)においてケルビンの定義の基準として用いられていました。水の三重点は厳密に 0.01 °C (273.16 K) であり、その時の圧力は 611.657 ± 0.010 Pa です。この定義には、同位体組成が厳密に定められたウィーン標準平均海水(VSMOW)が用いられます。
温度定点としての利用
多くの純物質の三重点は、国際温度目盛(ITS-90)における温度定点として利用されています。以下に代表的な物質の三重点を示します。
| 物質 | 温度 (K) | 圧力 (Pa) |
|---|---|---|
| 平衡水素 | 13.8033 | 7.041×103 |
| ネオン | 24.5561 | 4.338×104 |
| アルゴン | 83.8058 | 6.8891×104 |
| 水 | 273.16 | 6.11657×102 |
硫黄の三重点
硫黄は複数の同素体(斜方硫黄、単斜硫黄)を持つため、相図上には複数の三重点が存在します。これには「斜方-単斜-気」「単斜-液-気」「斜方-単斜-液」「斜方-液-気」の4つの組み合わせが含まれます。

よくある質問
三重点では何が起こりますか?
気体、液体、固体の三つの状態が同時に存在し、それらが熱力学的に平衡状態(変化が止まった状態)にあります。
なぜ三重点の温度と圧力は決まっているのですか?
ギブズの相律により、1成分系で3つの相が共存する場合、自由度が0になるため、温度と圧力が一意に定まります。
ヘリウムに三重点はありますか?
ヘリウムには気相・液相・固相が共存する三重点は存在しません。ただし、ヘリウム4のλ点など、特定の条件下で複数の相が関与する点は存在します。
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参考文献
- IUPAC. "Triple point". GoldBook.
- Atkins, P. W. 『アトキンス物理化学』.
- 国際水・蒸気性質協会 (IAPWS). "Revised Release on the Equation of State 2006 for H2O Ice Ih".
- 山澤一彰, 丹波純. "温度標準の現状". Netsu Sokutei, 2013.