高所作業における墜落制止用器具の概要と法令改正の変遷

📌 主なポイント
- ✓2019年2月1日の労働安全衛生法施行令改正に伴い、法令上の名称が「安全帯」から「墜落制止用器具」に変更された。
- ✓国際的な安全基準の動向を受け、墜落防止用具としては原則としてフルハーネス型の使用が義務付けられている。
- ✓高さが2メートル以上で作業床の設置が困難な高所作業において、墜落による危険を防止するための措置として使用される。
墜落制止用器具(ついらくせいしようきぐ)は、高所作業において労働者の墜落を防止するため、あるいはワークポジショニング(作業姿勢の安定保持)を目的として使用される個人用保護具である。従来は日本国内においても広く「安全帯」という名称で呼ばれていたが、国際的な安全基準の動向や法令改正に伴い、正式な法令上の名称が変更された。

法令改正と「墜落制止用器具」への移行
国際規格(ISO規格)や欧州規格(EN規格)などでは、墜落防止用具としてフルハーネス型の器具を前提とした規格策定が進められてきた。これに伴い、アメリカ合衆国では1990年代に胴ベルト型墜落防止用具の使用が制限されるなど、世界的にフルハーネス型への移行が進んだ。
日本国内においても、こうした国際的な動向を踏まえて労働安全衛生法関連の政省令が改正された。2018年6月8日に公布された「労働安全衛生法施行令の一部を改正する政令」が2019年2月1日に施行され、法令上の正式名称が従来の「安全帯」から「墜落制止用器具」に変更された。これに伴い、原則としてフルハーネス型の使用が義務付けられることとなった。
構造と種類
墜落制止用器具および関連する保持器具には、主に以下の形式が存在する。
- ハーネス型(フルハーネス型):墜落阻止時の衝撃を腿、肩、腰など複数箇所に分散させて受け止める形式。胴ベルト型に比べて身体にかかる負担が小さく、国際規格やEN規格、ANSI規格では墜落防止用の原則的な器具とされている。
- 胴ベルト型:腰まわりに装着する形式。高さが6.75メートル以下でフルハーネス型の着用者が墜落時に地面に到達するおそれのある場合などを除き、原則として墜落防止用器具としての使用が制限されるようになった。
また、器具と取付設備等を接続するロープやストラップ、コネクタ等からなる部品を「ランヤード」と呼び、落下時の衝撃を緩和するための「ショックアブソーバ」などが組み込まれて使用される。
労働安全衛生上の規定
労働安全衛生法第21条第2項では、事業者は労働者が墜落するおそれのある場所等において危険を防止するための必要な措置を講じなければならないと定められている。高さ2メートル以上で作業床を設けることが困難な場所では、防網を張るか労働者に墜落制止用器具を使用させるなどの措置が求められる。また、一定の要件に該当する作業従事者に対しては、特別教育の受講が義務付けられている。