化学
タングステン酸の化学的特性と鉱物学的特徴

タングステン酸の化学式や物理的性質、結晶構造、関連する鉱物や歴史について解説する百科事典記事。
📌 主なポイント
- ✓タングステン酸は三酸化タングステンの水和物の総称であり、+6価のタングステン化合物のオキソ酸である。
- ✓基本的には水に不溶であるが、塩基性の水溶液中ではWO42−イオンを形成して溶解する。
- ✓天然のタングステン酸塩鉱物には灰重石や鉄重石などがあり、その風化産物として重石華や加水重石華が存在する。
タングステン酸(たんぐすてんさん)は、三酸化タングステン(酸化タングステン(VI)、WO3)の水和物の形をとる、+6価のタングステン化合物の総称であり、タングステンを含むオキソ酸に該当する。1水和物(WO3・H2OあるいはH2WO4)や、2水和物(WO3・2H2OあるいはH4WO5)などの形態が存在する。

化学的性質と反応
固体の結晶構造は、タングステン原子に酸素原子が八面体配位した形を基本単位としている。さらに、一部の酸素が単位間で共有されるか、あるいは水分子が挿入されることで結晶構造を形成する。
基本的には水に不溶であるが、液性が塩基性を示す環境では、WO42−イオンを形成して水溶液中に溶解する。このWO42−イオンは、アルカリ金属などと結合してタングステン酸ナトリウムなどの塩を生成する特性を持つ。
鉱物としての産出
タングステンは質量数の大きな元素であり、天然に産出するタングステン酸に関連した鉱物の和名には、しばしば「重」の文字が付される傾向がある。
代表的な鉱物としては、タングステン酸カルシウムを主成分とする灰重石(CaWO4)や、タングステン酸鉄を主成分とする鉄重石などのタングステン酸塩鉱物が挙げられる。また、これらの鉱物の風化産物として、重石華(WO3・H2O)、メイマカイト(WO3・2H2O)、加水重石華(H2WO4)などの鉱物が知られている。
利用と歴史
実用面では、繊維製品における媒染剤として使用される例がある。また、灰重石の中には耐久性が低いものの透明度の高い石が見られることがあり、好事家が宝石として保存する場合もある。
歴史的には、1781年にスウェーデンの化学者カール・ヴィルヘルム・シェーレが灰重石から酸化タングステン(VI)の分離に成功し、これをタングステン酸と命名したことが研究の端緒となっている。
よくある質問
タングステン酸とはどのような物質ですか?
三酸化タングステンの水和物の形をとる+6価のタングステン化合物の総称であり、1水和物や2水和物などが存在します。
水に対する溶解度はどのようになっていますか?
基本的には水に不溶ですが、液性が塩基性になるとWO42−イオンを形成して水溶液になります。
関連する主な鉱物にはどのようなものがありますか?
タングステン酸カルシウムを成分とする灰重石や、タングステン酸鉄を成分とする鉄重石などが挙げられます。
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三酸化タングステン灰重石カール・ヴィルヘルム・シェーレパラタングステン酸アンモニウムオキソ酸
参考文献
- 松原 聰(監修)『鉱物の不思議がわかる本』 成美堂出版 2006年12月20日発行 ISBN 4-415-03570-1