排気タービン式過給機(ターボチャージャー)の機構と歴史

📌 主なポイント
- ✓ターボチャージャーは、スイスの技術者アルフレート・ビュッヒにより1905年に特許が取得された。
- ✓排気の流れを利用してタービンを回し、同軸上のコンプレッサーで吸入空気を圧縮してエンジンの出力向上を図る。
- ✓自動車の市販ガソリン車における世界初の採用例は、1962年のゼネラルモーターズによるオールズモビル・F85やシボレー・コルヴェアである。
ターボチャージャー(英語: turbocharger)とは、内燃機関(エンジン)の排気ガスの流れを利用してタービンを回転させ、同軸で結ばれたコンプレッサー(圧縮機)を駆動することで、シリンダーへ送り込む空気の密度を高める過給機の一種である。
基本構造と作動原理
ターボチャージャーの主要な構成要素は、排気の運動エネルギーを受けて回転するタービン、タービンの回転力を伝えるシャフト、空気を取り込んで圧縮する遠心式のコンプレッサー、そしてこれらを収めて気体の流れを制御するハウジングである。タービンとコンプレッサーは1本のシャフトの両端に固定されており、同じ回転速度で駆動される。
エンジンがシリンダー内に吸入する空気の密度を高めることにより、より多くの酸素を燃焼室へ供給して高い燃焼エネルギーを得ることができる。エンジンの出力軸から機械的機構を介して動力を得るスーパーチャージャー(機械式過給機)と比較して、通常は外部へ廃棄される排気のエネルギーの一部を回収するため、効率が高い点が特徴である。
自動車などに用いられる小型のターボチャージャーでは、タービンの回転速度が20万 rpmを超える場合があり、800℃から900℃に達する高温の排気ガスに直接晒される。そのため、軸受の潤滑や冷却にはエンジンオイルなどが利用され、高負荷運転後にエンジンを直ちに停止すると軸受の焼き付きやスラッジ発生の原因になるため、走行後のアイドリング等による冷却が推奨される場合がある。
歴史的発展
ターボチャージャーは、スイスの蒸気タービン技術者であるアルフレート・ビュッヒによって発明され、1905年に特許が取得された。1912年にはドイツのルドルフ・ディーゼルがスルザー社と提携し、ディーゼルエンジンの低回転域におけるトルク向上を目的として導入を試みた。ビュッヒの開発したターボディーゼルエンジンは1925年に完成し、主に船舶分野で広く普及していった。
第二次世界大戦期にかけて、アメリカでは航空機の高高度飛行やパワーアップを目的とした研究・量産化が進められ、連合国側の航空戦略に寄与した。日本においても、船舶用エンジンを中心に研究が進められ、1942年には三菱重工業がMAN社製のユニフロー掃気式ディーゼルエンジンをベースに国内初となる2ストロークディーゼル用ターボチャージャーを導入し、1944年に特許を取得したものの、軍用船舶への本格的な実装は戦後となった。
市販のガソリン自動車向けとしては、1962年にアメリカのゼネラルモーターズ(GM)が「オールズモビル・F85」や「シボレー・コルヴェア」にオプション設定したのが最初であり、欧州では1973年にBMW・2002ターボが初採用した。日本国内では1979年に日産自動車がセドリックおよびグロリアに初採用し、以後スポーツカーや高級車を中心に普及が進んだ。
機械式過給機および自然吸気との比較
エンジンの出力軸から直接動力を奪う機械式過給機と異なり、ターボチャージャーは排気損失の一部を利用するためエンジン本体への機械損失が生じない。一方で、吸排気配管が複雑化するほか、エンジンの過渡運転時に十分な過給圧に達するまで時間的遅れが生じる「ターボラグ」と呼ばれる現象が発生しやすい特性を持つ。
また、過給によってシリンダー内の圧力や燃焼温度が上昇するため、ガソリンエンジンの場合はデトネーション(異常燃焼)が発生しやすくなる課題があった。従来はノッキングを防ぐために圧縮比を低く設定したり、燃料を多めに噴射して空燃比を濃くする手法がとられていたが、近年ではガソリン直噴エンジンの普及や燃料噴射の高度化により、空燃比を極端に濃くすることなく効率的な燃焼と燃費改善を両立した「ダウンサイジングターボ」が広く普及している。
主な用途
ターボチャージャーは、船舶、発電機、建設機械、鉄道車両、自動車など幅広い内燃機関で利用されている。特に回転速度の変動が少ない船舶や発電機などの用途では、ターボラグの影響を受けにくく、高い効率を発揮するため最適とされている。モータースポーツの分野においても、レギュレーションの変遷や熱回生システムの導入などを通じて、高出力化とエネルギー効率の向上に重要な役割を果たし続けている。
よくある質問
ターボチャージャーとは何ですか?
ターボラグとはどのような現象ですか?
ダウンサイジングターボとは何ですか?
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参考文献
- 今給黎孝一郎「排気ガスタービン過給機の技術系統化調査」『技術の系統化調査報告』第16集、国立科学博物館、2011年。
- 石田満三郎『航空機用ピストン・エンジン』日本航空技術協会、1989年。