タイプライターの歴史と機構

📌 主なポイント
- ✓タイプライターは文字盤を打鍵することで活字を紙に打ち付け、文字を印字する機械である。
- ✓1870年にデンマークのラスムス・マリング=ハンセンが発明したライティングボールが、世界で初めて商業生産されたタイプライターとされる。
- ✓クリストファー・レイサム・ショールズらが開発に関わったモデルによってQWERTY配列が広く普及し、商業的な成功を収めた。
タイプライター(英語: typewriter)とは、文字盤を打鍵することで活字を紙に打ち付け、文字を印字する機械である。筆記業務の高速化や各種原稿の清書などを目的に使用され、カーボン紙を挟んで複数枚の紙に同時に印字することで文書の複写も可能であったことから、企業の事務や個人の文章作成などで広く活用された。
概要
タイプライターが普及する以前は、語り手が口述した内容を書記や秘書が聞き取って文字にし、さらに後から清書する手法が一般的であった。本などの活字を作成するためには職人が活版を組む必要があり多大な費用がかかったほか、会議の議事録などでは通常の筆記速度では追いつかないため、欧米では数々の速記法が考案され、独立した職業として確立していた。
個人で使用できるタイプライターが登場すると、著者自身で活字による文書を作成することが可能となり、速記法を習得せずとも口述をかなりの速度で記述できるようになった。また、欧文圏のタイプライターではタッチタイピングが比較的容易に行えるため、視覚障害者が文章を書く上での強力な補助手段ともなった。
種類・分類
手動式タイプライター
手動式タイプライターは、先端部に活字が付いたアーム(タイプバー)が機構を介してキーに直結している。印字したい用紙をローラーにセットし、任意のキーを押下すると梃子の原理でアームがインクリボンを叩き、紙に文字が転写される。キーから指を離すとアームが戻ると同時にローラーが1文字ぶん左にずれる仕組みになっている。印字部分が右側に近づくとベルが鳴り、利用者に改行を促す。
電動式・電子式タイプライター
アーム同士の絡みを防ぎながら打刻する機構の改良が進められ、1961年にはIBMが「タイプボール」を搭載したセレクトリックを発表した。その後、1978年には「デイジーホイール」が開発され、打刻機構の主流となった。さらに1970年代以降、バッファメモリを備えた電子式タイプライターが登場し、センタリングやアンダーラインなどの機能が追加され、のちの欧文ワードプロセッサーへと発展していった。
歴史
タイプライターは一人の人物によって一気に発明されたわけではなく、長年にわたる多数の発明家の改良を経て実用的なものとなった。
1714年にイギリスのヘンリー・ミルが機械に関する特許を取得したのをはじめ、1829年にはウィリアム・オースチン・バートが「Typographer」と呼ばれる機械の特許を取得した。しかし、これらは手書きよりも速度が出ず、商業的な成功には至らなかった。
1865年にはデンマークのラスムス・マリング=ハンセンが「ハンセン・ライティングボール」を発明し、これが1870年に世界で初めて商業生産・販売されたヨーロッパ製のタイプライターとなった。
商業的に最も成功を収めたのは、ミルウォーキーのクリストファー・レイサム・ショールズが1868年6月23日に特許を取得した機械である。この特許を買い取った業者を通じてE・レミントン・アンド・サンズが製造を手がけ、「Sholes and Glidden Type-Writer」として1873年に発売された。この機種に採用されたQWERTY配列は、その後の標準的なキーボード配列として広く普及していくことになった。
タイピストの誕生
タイプライターの普及に伴い、書類の清書を行う「タイピスト」と呼ばれる専門職が誕生した。小規模な事務所では秘書がこれを兼務することも多かったが、需要の増大に伴い専業のタイピストを育成する学校も登場した。20世紀中頃には、タイピストは女性の代表的な職業の一つとなり、女性の社会進出に大きく貢献した。
よくある質問
タイプライターとはどのような機械ですか?
商業的に初めて成功したタイプライターはいつ登場しましたか?
タイピストとはどのような職業ですか?
関連記事
参考文献
- Acocella, Joan (April 9, 2007). The Typing Life: How writers used to write. The New Yorker.
- “6月23日 世界初のタイプライター(1868年)”. ブルーバックス. 講談社 (2019年6月23日).