感染症医学

チフス菌による全身性感染症である腸チフスの特徴と歴史

チフス菌による全身性感染症である腸チフスの特徴と歴史
サルモネラの一種であるチフス菌によって引き起こされる腸チフスの症状、感染経路、日本の発生状況について解説するエンサイクロペディア記事です。

📌 主なポイント

  • 腸チフスはチフス菌(Salmonella Typhi)によって引き起こされる全身性の感染症である。
  • 感染経路は主に汚染された水や食物を通じた経口感染である。
  • 日本では感染症法において3類感染症に指定されている。

腸チフス(ちょうチフス)は、サルモネラの一種であるチフス菌(Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhi)の感染によって引き起こされる全身性の細菌感染症である。一般のサルモネラ感染症とは区別され、パラチフスなどとともにチフス性疾患と総称される。

腸チフスの病原体であるチフス菌の電子顕微鏡画像または関連する医学的イラスト
腸チフスの病原体であるチフス菌のイメージ

衛生環境の整っていない地域や発展途上国を中心に世界各地で発生が見られるほか、日本では感染症法上の3類感染症に指定されている。

感染経路と病態生理

主な感染経路は経口感染であり、無症状病原体保有者や患者の糞便・尿に汚染された飲み水や食物を摂取することによって引き起こされる。また、手洗いの不十分な状態での食事や、衛生環境の不備によるハエを介した汚染も原因となる。体内に取り込まれたチフス菌は腸管から腸管膜リンパ節へ侵入し、マクロファージ内で増殖しながら血流に乗って全身へ移行して菌血症を誘発する。

腸チフスの症状の推移を示す体温変化のグラフ
腸チフスの症状の推移。グラフは体温の変化

臨床症状

感染から7〜14日程度の潜伏期間を経て、発熱、頭痛、関節痛、食欲不振、腹痛などが徐々に現れる。経過とともに40度前後の高熱が1週間から2週間持続する「稽留熱(けいりゅうねつ)」を特徴とし、胸部や腹部にピンク色の斑点(バラ疹様皮疹)が現れることがある。重症化すると腸出血や腸穿孔、意識障害などを引き起こすリスクがある。

日本国内の動向

昭和初期から第二次世界大戦直後にかけては年間約4万人の患者が発生していたが、環境衛生や上下水道の整備に伴い患者数は大幅に減少した。現在では年間患者数の多くが海外渡航による輸入感染症となっており、旅行者の増加とともに動向が注視されている。

よくある質問

腸チフスの主な感染原因は何ですか?
おもにチフス菌に汚染された飲料水や食物を摂取する経口感染によって引き起こされます。
日本の法制度において腸チフスは何類感染症に分類されますか?
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律において、3類感染症に指定されています。

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参考文献

国立感染症研究所 腸チフス・パラチフスとは (2018年)