VA線ストリッパーの構造と歴史

📌 主なポイント
- ✓VA線ストリッパーは、VA線(Fケーブル)のシースと絶縁体を剥ぎ取るための専用工具である。
- ✓1979年に株式会社松阪鉄工所によって開発され、1980年に商品化された。
- ✓JIS C 3342で規定される600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル平形などを対象としている。
- ✓エコ電線の普及に伴い、刃の軌跡の制御やレバー比の改良など各社による技術革新が行われてきた。
VA線ストリッパーは、一般建築物の屋内配線工事などで広く使用される低電圧用の電線であるVA線(Fケーブル)のシース(外装被覆)と絶縁体を剥ぎ取るための専用工具である。日本国内で開発され、主に国内の電気工事の現場で利用されている。

開発の歴史
1970年代当時、住宅の屋内配線工事においては、電工ナイフ、ペンチ、ニッパー、ドライバーなどを組み合わせて全ての配線作業を行っていた。VA線の皮むきも汎用性の高い電工ナイフを用いて行われており、熟練した作業者にとっては特別な不便のない作業であった。しかし、熟練を要する電工ナイフの扱いは、経験の浅い初心者にとって負担が大きいものであった。
こうした背景のもと、株式会社松阪鉄工所(MCC)が1979年10月9日に特許出願を行い、1980年に世界で初めてVA線の皮むき専用工具として商品化した。発売当初は電工ナイフを使用するプロの職人層への浸透に時間を要したものの、松下電工(現・パナソニック)が新商品の電気器具取り付け用として推奨工具に採用したことを契機に、広く普及していった。

技術的特徴と参入メーカー
VA線は、正式名称を600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル平形(JIS C 3342)といい、1964年3月に制定された。VA線ストリッパーは、複数ある芯線サイズ(Φ1.6やΦ2.0の2心・3心)に対応するため、刃物の設計やリンク機構に様々な工夫が凝らされてきた。
初期のモデルでは複数のサイズを一つの刃物で処理することが技術的に困難であったが、各社の参入と改良によって対応力が向上した。1990年代以降、室本鉄工(メリー)やベッセル、ロブテックス、花園工具(VICTOR)などの工具メーカーが次々に参入し、リンク機構の改良やハンドル形状の最適化が進められた。
エコ電線の普及と近年の動向
1998年以降、環境問題への配慮からハロゲン元素や重金属を含まないエコ電線(EM-EEF等)が規格化され、公共事業などを中心に採用が拡大した。エコ電線は従来のVA線と比較して被覆材の材質が硬いため、切断や引き抜きにより大きな操作力が必要となった。
これに伴い、各メーカーはレバー比の改善やカム機構を用いた刃の軌跡のコントロールなど、硬い被覆にも対応する新型モデルを相次いで投入した。また、JIS規格において被覆寸法の公差が厳密に定められていないことによる個別の寸法差に対処するため、刃の取り付け位置を微調節できる機構を備えた製品も開発されている。