地形学
谷(地形)の概要と分類

谷(たに)は、山や丘陵に挟まれた細長い低地地形です。河川による侵食や地殻変動など、その成因や分類、地形的特徴について専門的な視点から解説します。
📌 主なポイント
- ✓谷は周囲より標高が低い細長い溝状の地形であり、等高線が凹状に湾曲して示される。
- ✓成因により、河川や氷河などの侵食による「侵食谷」と、地殻変動などによる「初生谷」に大別される。
- ✓埋没谷は過去の谷が堆積物で埋まった地形であり、地震時の液状化リスクが高い軟弱地盤となることが多い。
谷(たに、英語: valley)とは、山地、丘陵、あるいは山脈に挟まれた、周囲よりも標高が低い細長い溝状の地形を指します。地形学において、谷は地表の侵食や地殻変動といった様々なプロセスによって形成される重要な地形要素です。
地形的特徴
地図上では、谷は尾根とは対照的に、等高線が山頂方向へ向かって凹状に湾曲する形で表されます。谷底は必ずしも一方向へ傾斜している必要はありませんが、多くの場合、河川の流路や水が集まる低所として機能します。

成因による分類
谷は、その形成過程に基づいて大きく「侵食谷」と「初生谷」に分類されます。
侵食谷
流体(河川、氷河、風、波など)の運動によって地表が削り取られて形成された谷です。最も一般的なものは河川の浸食作用による「河谷(かこく)」であり、山間部では急峻なV字谷を形成することが多いです。一方、氷河の浸食によるものはU字谷と呼ばれます。
初生谷
侵食以外の要因、主に地殻変動や火山活動によって形成された谷です。リフト谷や断層谷などがこれに含まれます。

埋没谷
かつて谷であった場所が、後の堆積作用によって泥や砂などの軟らかい土砂で埋められ、平坦化した地形を「埋没谷」と呼びます。東京都区部東側など、都市部の地下にも存在することがあります。埋没谷は地盤が軟弱であるため、地震発生時には液状化現象や揺れの増幅といったリスクを伴うことが指摘されています。
地域的な呼称
日本国内では、地形の呼称に地域差が見られます。一般的に東日本では「沢(さわ)」、西日本では「谷(たに)」と呼ばれる傾向があります。また、特定の地域では「谷戸(やと)」「谷津(やつ)」「谷地(やち)」といった名称で呼ばれることもあります。
よくある質問
谷と渓谷の違いは何ですか?
谷は広義の地形名称ですが、特に河川の浸食によって形成され、川が流れている急峻な谷を渓谷や峡谷と呼ぶことが一般的です。
埋没谷とはどのような地形ですか?
かつて谷であった場所が、後の時代に土砂などが堆積して平坦になった地形です。地盤が軟らかいため、地震時の揺れや液状化現象に注意が必要な場所として知られています。
「谷」と「沢」の呼び分けに決まりはありますか?
厳密な学術的定義による区分ではなく、地域的な方言の傾向が強いです。一般的に東日本では「沢」、西日本では「谷」と呼ばれることが多いですが、富山県のように規模の大小で使い分ける地域もあります。
関連記事
地形学河川氷河断層液状化現象
参考文献
- 日本地形学連合(JGU)(編集)、鈴木隆介・砂村継夫・松倉公憲(責任編集)『地形の辞典』古今書院、2017年。
- 野満隆治『河川学』第二篇 河谷発生論、公益社団法人 土木学会。
- 兵庫県環境部「地形の分類」。
- 朝日新聞「都心の地下『埋没谷』見える化/泥が埋めた軟地盤 揺れや液状化に注意」2021年6月25日。