物理化学

流体の物性における粘度の基礎と温度依存性

流体の物性における粘度の基礎と温度依存性
流体のねばりの度合を示す粘度の定義、動粘度、温度依存性、および分子運動論との関係について詳しく解説する専門的解説記事。

📌 主なポイント

  • 粘度は流体のねばりの度合を示し、SI単位はパスカル秒(Pa·s)である。
  • 外力や剪断変形率に対して粘度が一定である流体をニュートン流体と呼ぶ。
  • 一般に液体の粘度は温度上昇に伴って低下し、気体の粘度は温度上昇に伴って上昇する。

粘度(ねんど、英語: viscosity)とは、物質の流動に対する抵抗力を示す、いわゆる「ねばりの度合」を表す物性値である。粘性率や粘性係数、あるいは動粘度と区別して絶対粘度とも呼ばれる。一般には液体や気体といった流体が持つ性質として扱われるが、粘弾性などの特性を示す固体においても用いられることがある。

Viscosities
Viscosities

定義と基礎方程式

粘性を持つ流体を面積 $S$、間隔 $h$ の2枚の平板ではさみ、一方の平板を相対速度 $U$ で平行に動かしたとき、移動方向と逆向きに剪断応力(摩擦応力) $ au$ が発生する。平板と流体の間に生じる力を $F$ とすると、力は間隔 $h$ の逆数と相対速度 $U$ に比例し、次式のように表現される。

剪断応力の関係式
剪断応力の関係式

このときの比例係数 $\mu$ が粘度である。より一般化して、面と垂直に $y$ 軸をとり、面と平行方向の流体速度を $U$ とすると、剪断応力は単位時間あたりの剪断変形率に比例する。

ニュートンの流体摩擦法則
ニュートンの流体摩擦法則

この関係はニュートンの流体摩擦法則として知られている。外力に対して粘度 $\mu$ が一定値をとる物質およびその性質をニュートン流体と呼び、一方でせん断変形率によって粘度が変化する物質を非ニュートン流体と呼ぶ。

動粘度

流体の粘度をその密度 $\rho$ で割った値は動粘度(動粘性係数)と呼ばれ、量記号には $\nu$ が用いられる。毛管粘度計などを用いて流体が自重で移動する速度や時間を比較する際によく指標として用いられる。

動粘度の定義式
動粘度の定義式

温度依存性

一般に、液体の粘度は温度が上昇すると低下する傾向にあり、気体の粘度は温度が上昇するとともに上昇する。例えば、液体における粘度と温度の関係を表す式の一つとして次のような指数関数的関係が挙げられる。

液体の温度依存性に関する式
液体の温度依存性に関する式

また、高分子物質やガラス形成液体などのアモルファス材料においては、ガラス転移温度近傍での緩和時間の温度依存性を記述するために時間-温度換算則やWLF式などが活用される。気体の粘度評価においてはスザランドの定数などを導入した温度補正式が利用されることが多い。

分子運動論との関係

気体の分子運動論に基づけば、低圧気体の粘度は気体分子の平均自由行程や密度、分子量と関連付けられる。また、液体においては、絶対反応速度論や活性化自由エネルギーの概念を用いた理論式が提案されており、分子のモル体積やエンタルピー変化を考慮に入れた解析が行われている。

よくある質問

粘度と動粘度の違いは何ですか?
粘度(絶対粘度)が流体の剪断応力と変形率の関係を表す物性値であるのに対し、動粘度はその粘度を流体の密度で割った値であり、重力下での流動性を評価する指標として用いられます。
ニュートン流体とは何ですか?
剪断応力と剪断変形率(速度勾配)の比率である粘度が、外力の大きさや変形率によらず一定であるような流体のことを指します。水や空気などが代表例です。
温度が変化すると粘度はどのように変わりますか?
多くの液体では温度が上がると粘度が低下しますが、気体の場合は逆に温度が上昇すると粘度も大きくなる性質があります。

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参考文献

Watter, H. (2015). Hydraulik und Pneumatik: Grundlagen und Übungen. Springer Vieweg.
高橋幹二『エアロゾル学の基礎』森北出版, 2003年。
林茂雄『移動現象論入門』東洋書店, 2007年。