環境化学

揮発性有機化合物の特性と環境影響に関する総説

揮発性有機化合物の特性と環境影響に関する総説
揮発性有機化合物(VOC)の定義、分類、環境への影響および削減に向けた取り組みについて解説する専門記事です。

📌 主なポイント

  • 揮発性有機化合物(VOC)は、常温常圧で大気中に容易に揮発する有機化学物質の総称である。
  • WHOの定義等に基づき、沸点や揮発性の度合いに応じてVVOC、VOC、SVOC、POMなどに分類される。
  • 光化学オキシダントや浮遊粒子状物質の原因物質の一つとされ、改正大気汚染防止法などの規制対象となっている。
  • 植物や微生物などの生物からも生物由来揮発性有機化合物(BVOC)として放出される。

揮発性有機化合物(きはつせいゆうきかごうぶつ、英: Volatile Organic Compounds、略称: VOCVOCs)とは、常温常圧において大気中へ容易に揮発する性質を持つ有機化学物質の総称である。

分類と定義

世界保健機関(WHO)の定義をはじめとして、沸点の範囲や化合物の性質によっていくつかのグループに分類されている。代表的な分類として、高揮発性有機化合物(VVOC)、揮発性有機化合物(VOC)、準揮発性有機化合物(SVOC)、そして粒子状有機化合物(POM)がある。

トルエン。VOCの一つ
トルエン。VOCの一つ

具体的な物質としては、トルエン、ベンゼン、ジクロロメタン、ホルムアルデヒドなどが挙げられる。これらは溶剤や燃料などとして工業的に広く活用されている一方で、環境や健康への影響が懸念される物質も含まれる。

環境および健康への影響

一部の揮発性有機化合物は、光化学オキシダントや浮遊粒子状物質の原因物質となる。また、ホルムアルデヒドなどの物質は、室内空気汚染に関連するシックハウス症候群や化学物質過敏症の原因の一つとして社会的に認知されてきた。

生物由来揮発性有機化合物

人間活動に起因するものだけでなく、植物、動物、微生物などの生物によって放出される揮発性有機化合物は生物由来揮発性有機化合物(BVOC)と呼ばれる。これらは主にテルペノイド、アルコール、ケトン等であり、植物の食害に対する防御機構としての役割を持つほか、大気中の化学反応や生態系のバランスに関与している。

削減に向けた取り組み

日本国内においては、大気汚染防止法の改正による主要な排出施設への規制をはじめとして、産業界での自主的な排出削減計画の策定や、溶剤回収システムの導入が進められている。また、製品製造時における臭気やVOCの放散を抑制するための試験も行われている。

よくある質問

揮発性有機化合物(VOC)とはどのような物質ですか?
常温常圧で大気中に容易に揮発する有機化学物質の総称であり、トルエンやベンゼン、ホルムアルデヒドなどが含まれます。
VOCはどのように分類されますか?
沸点の範囲や揮発性の高さに応じて、高揮発性有機化合物(VVOC)、揮発性有機化合物(VOC)、準揮発性有機化合物(SVOC)、粒子状有機化合物(POM)などに分類されます。
生物由来揮発性有機化合物(BVOC)とは何ですか?
植物、動物、微生物などの生物から排出される揮発性有機化合物のことであり、テルペノイドなどが代表例として挙げられます。

関連記事

悪臭水質汚濁防止法土壌汚染対策法PRTR有機溶剤作業主任者

参考文献

  • 食品中の揮発性有機化合物 - www.nihs.go.jp (2024年10月3日閲覧)
  • 佐伯香織ほか「TVOC 濃度を指標とした獣医療従事者に対する汚染度の調査」『Veterinary Nursing』第26巻第2号、2021年。
  • Kliszcz, A. et al. "Fleeting Beauty—The World of Plant Fragrances and Their Application" Molecules, 2021.
  • 池永誠「土壌微生物が産生する揮発性有機化合物 (VOCs) の網羅的解析による土壌の微生物性評価法の開発」『発酵研究所助成研究報告集』第37巻、2023年。