気象学
ウォーカー循環:熱帯太平洋における大気の東西循環

ウォーカー循環は、熱帯太平洋の東西の海水温差によって生じる大気の循環システムです。エルニーニョ・南方振動との関連やメカニズムを解説します。
📌 主なポイント
- ✓ウォーカー循環は、熱帯太平洋の東西の海水温差によって生じる大気の東西循環である。
- ✓西太平洋で上昇気流、東太平洋で下降気流が発生する構造を持つ。
- ✓エルニーニョ現象時には循環が弱まり、ラニーニャ現象時には循環が強化される。
- ✓太平洋だけでなく、インド洋や大西洋においても同様の循環が確認されている。
ウォーカー循環(Walker circulation)は、熱帯太平洋の赤道域において発生する大気の東西循環です。この循環は、太平洋の東西で生じる海水温の地域差によって駆動され、熱帯地方の気候システムにおいて重要な役割を果たしています。名称は、南方振動の発見者である気象学者ギルバート・ウォーカーに由来します。

メカニズム
ウォーカー循環は、赤道付近で吹く貿易風と、それに伴う海流の動きによって形成されます。貿易風が海面に与える応力により赤道海流が発生しますが、大陸の存在によってその進路が制限されるため、太平洋の西側(海洋大陸付近)には温かい海水が蓄積し、「熱帯暖水プール」が形成されます。一方で、太平洋の東側(ペルー沖)では、流出した海水を補うように冷たい深層水が湧昇します。

この東西の温度差が、大気の対流を促します。西太平洋では水温が高いことから積雲対流が活発化し、上昇気流が発生します。この上昇した空気は上層を東へ流れ、東太平洋で下降気流となります。下層では再び東風(貿易風)が吹くことで、巨大な東西の循環が完成します。なお、同様の循環はインド洋や大西洋においても観測されており、広義にはこれらもウォーカー循環の一部として捉えられることがあります。
エルニーニョ・南方振動との関係
ウォーカー循環の強さは、エルニーニョ・南方振動(ENSO)と密接に関連しています。
- エルニーニョ現象時:西太平洋の暖水プールが東方へ移動し、対流活動の中心も太平洋中部へと移ります。これにより、本来の西太平洋での上昇気流が弱まり、ウォーカー循環全体が減衰します。
- ラニーニャ現象時:西太平洋での対流活動が平年以上に活発化し、ウォーカー循環は強化されます。



よくある質問
ウォーカー循環は何によって引き起こされますか?
主に太平洋赤道域における東西の海水温の地域差によって引き起こされます。貿易風の影響で西太平洋に温かい海水が蓄積し、東太平洋では冷たい深層水が湧昇することで温度差が生じます。
エルニーニョ現象が発生するとウォーカー循環はどうなりますか?
エルニーニョ現象が発生すると、西太平洋の暖水域が東方へ移動し、対流活動の中心も移動するため、ウォーカー循環は弱まります。
ウォーカー循環は太平洋以外でも見られますか?
はい、インド洋や大西洋においても同様の東西循環が生じていることが確認されています。
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エルニーニョ現象ラニーニャ現象貿易風海洋大陸気候システム
参考文献
- 植田宏昭『気候システム学』筑波大学出版会、2012年。
- 小倉義光『一般気象学』(第2版補訂版)東京大学出版会、2016年。
- 水野一晴『気候変動で読む地球史』NHK出版、2016年。
- 田中博『地球大気の科学』共立出版、2017年。