地理学
湾(地形)の概要と定義

海や湖の一部が陸地に入り込んだ地形である「湾」について、その定義、成因、および歴史的な呼称の変化を解説します。
📌 主なポイント
- ✓湾は、海や湖が陸地に入り込んだ地形を指す。
- ✓国連海洋法条約では、湾口の幅と奥行きの比率に基づいた法的な定義が存在する。
- ✓湾の形成には、海面の上昇による沈水、火山活動、プレートテクトニクスなどの要因がある。
- ✓日本における海図上の表記は、昭和40年代に「海湾」から「湾」へと整理された。
湾(わん)は、海や湖の一部が陸地側へ大きく入り込んだ地形を指します。一般的に、規模が小さいものは「入り江(いりえ)」と呼ばれます。
国際法上の定義
海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)第10条では、湾について法的な定義が定められています。それによれば、湾とは「湾口(入り口)の幅に比べて奥行きが十分に深く、湾口に引いた直線を直径とする半円の面積よりも、湾入部の水域が広いもの」とされています。また、単一の国に属し、湾口幅が24海里以内の湾については、その水域を内水として扱うことが認められています。さらに、古くから特定の国が主権を行使してきた水域は「歴史的湾」として内水とみなされる場合がありますが、この解釈を巡っては国際的な紛争が生じることもあります。

成因による分類
湾が形成される要因は主に以下の通りです。
- 沈水による形成:海面の上昇により、かつて陸地であった場所が海面下に沈み、周囲の地形が残ることで形成されます。東京湾や大阪湾がこれに該当します。
- 火山活動:火口やカルデラが海面下に沈むことで形成されます。鹿児島湾などが典型例です。
- プレートテクトニクス:地殻の変動に関連して生じるもので、富山湾、相模湾、駿河湾などが挙げられます。

呼称の変遷
英語では規模の大きいものを「Gulf」、小さいものを「Bay」と呼び分けますが、日本語ではこれらを区別せず「湾」と呼ぶことが一般的です。日本において、かつて海図上で「海湾(Gulf)」と表記されていた東京湾や伊勢湾などは、昭和40年代以降、日本の地形規模に合わせる形で「湾(Bay)」へと改記されました。
よくある質問
「湾」と「入り江」の違いは何ですか?
一般的に、湾よりも規模が小さいものを入り江と呼びます。
歴史的湾とは何ですか?
国連海洋法条約の定義を満たさない場合でも、古くから特定の国が主権を行使してきた水域を指し、内水として扱われることがあります。
なぜ日本の海図で「海湾」という表記が減ったのですか?
昭和40年代に、日本の地形の規模に対して「海湾(Gulf)」という呼称は適切ではないと判断され、「湾(Bay)」に統一されたためです。
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参考文献
- 日本陸水学会編『陸水の事典』講談社、2006年、19頁。
- 中西良夫「海峡地形の呼称について その呼称起源と妥当性の問題」『地図』第1巻第4号、日本地図学会、1963年、18-22頁。
- 島上毅徳「東京湾北部海上巡検用図」『地図』第33巻第4号、日本地図学会、1995年、25-26頁。
- 藤岡換太郎『深海底の科学』日本放送出版協会、1997年。