天文学
太陽系外惑星 WASP-76b:鉄の雨が降る極端な環境

うお座の方向に位置するホット・ジュピター「WASP-76b」の概要。昼夜の激しい温度差により鉄の雨が降ると考えられている特異な大気環境や物理的性質について解説します。
📌 主なポイント
- ✓WASP-76bは、うお座の方向に約640光年離れた位置にあるホット・ジュピターである。
- ✓主星からの強い放射により大気が膨張しており、質量に対して半径が非常に大きい。
- ✓昼夜の温度差と大気循環により、夜側で鉄が凝縮して雨として降る「鉄の雨」の現象が示唆されている。
WASP-76bは、うお座の方向に約640光年離れた位置にある恒星WASP-76を公転する太陽系外惑星である。2013年にスーパーWASP(Super WASP)プロジェクトによってトランジット法を用いて発見された。
物理的性質
WASP-76bは、主星からわずか約500万kmという極めて近い軌道を約1.8日で公転する「ホット・ジュピター」に分類される。質量は木星の約0.89倍であるが、主星からの強力な放射を受けて大気が膨張しているため、半径は木星の約1.85倍に達する。このため平均密度は非常に低く、約0.17g/cm³と推定されている。


大気環境と「鉄の雨」
WASP-76bは主星に対して常に同じ面を向けて公転する「潮汐固定」の状態にあると考えられている。昼側の表面温度は2,400℃を超えると推定されており、この極端な高温により大気中には鉄が蒸気として存在している。
2020年、超大型望遠鏡VLTを用いた観測により、昼側から夜側へ移動する大気中で鉄蒸気が凝縮し、夜側で「鉄の雨」として降っている可能性が高いことが報告された。昼夜の境界付近で発生する猛烈な大気循環が、この鉄の循環を永続させていると考えられている。

よくある質問
WASP-76bはどのように発見されましたか?
2013年にスーパーWASP(Super WASP)プロジェクトによるトランジット法を用いた観測で発見されました。
なぜ鉄の雨が降ると考えられているのですか?
昼側の高温で気化した鉄が、大気循環によって夜側に運ばれ、低温の夜側で凝縮して雨として降るというシナリオが観測データから導き出されたためです。
WASP-76bの公転周期はどれくらいですか?
約1.8日(約43時間)という非常に短い周期で主星を公転しています。
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参考文献
- West, R. G. et al. (2016). "Three irradiated and bloated hot Jupiters: WASP-76b, WASP-82b & WASP-90b". Astronomy and Astrophysics.
- Ehrenreich, D. et al. (2020). "Nightside condensation of iron in an ultra-hot giant exoplanet". Nature.
- Seidel, J. V. et al. (2019). "Hot Exoplanet Atmospheres Resolved with Transit Spectroscopy (HEARTS). II. A broadened sodium feature on the ultra-hot giant WASP-76b". Astronomy and Astrophysics.