化学

水クラスターの構造と化学的性質

水クラスターの構造と化学的性質
水分子が水素結合によって形成する集合体「水クラスター」の構造、計算化学による予測、および実験的な観測手法について解説します。

📌 主なポイント

  • 水クラスターは水分子が水素結合で結びついた集合体である。
  • 計算化学により、六量体や八量体など多様な異性体構造が予測されている。
  • 気相中での単離観測や、分光法を用いた動的性質の解析が進んでいる。

水クラスター(Water cluster)とは、複数の水分子(H₂O)が水素結合を介して結びつき、一時的に形成される集合体のことを指します。水分子は水素結合によって複雑なネットワークを構築する性質があり、このクラスター構造の理解は、液状の水が示す特異な物理的性質や、溶質分子の水和メカニズムを解明する上で重要な鍵となります。

理論的予測と計算化学

計算化学in silico)を用いた研究では、エネルギー的に安定な水分子の集合体について詳細な予測が行われています。特に環状クラスター((H₂O)n)の研究では、nが3から60程度の範囲で構造が検討されており、クラスターサイズが大きくなるにつれて酸素原子間の距離が短縮する傾向が示されています。これは、水素結合を介した協同的な相互作用により、水素結合そのものが強化されるためと考えられています。

六量体((H₂O)₆)においては、環状、かご型、プリズム型など複数の異性体がほぼ同程度の安定性を持つことが計算で示されています。さらに巨大なクラスターとして、正二十面体状の構造やフラーレン型の28量体(通称「バッキーウォーター」)などもエネルギー極小値を持つ構造として予測されています。

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よくある質問

水クラスターは液体の水の中で常に存在していますか?
液相中の水分子ネットワークは極めて寿命が短く、絶えず構造が変化しています。特定のクラスター構造が長時間維持されることはなく、フェムト秒からピコ秒オーダーで動的に再構成されています。
水クラスターを観測する主な手法は何ですか?
気相中での遠赤外振動-回転-トンネル分光法や、広帯域マイクロ波分光法などが用いられます。また、結晶中の水和物としてX線回折による構造決定も行われています。

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参考文献

  1. Ralf Ludwig (2001). “Water: From Clusters to the Bulk”. Angew. Chem. Int. Ed. 40: 1808–1827. doi:10.1002/1521-3773(20010518)40:10<1808::AID-ANIE1808>3.0.CO;2-1.
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