気象学・公衆衛生

湿球黒球温度(WBGT)の概要と熱中症予防への活用

湿球黒球温度(WBGT)の概要と熱中症予防への活用
湿球黒球温度(WBGT)は、熱中症のリスクを判断するための指標です。その定義、計算方法、歴史、および日本における熱中症予防への活用について解説します。

📌 主なポイント

  • WBGTは湿度、輻射熱、気温の3要素を反映した熱中症リスク指標である。
  • 1954年にアメリカ海兵隊の訓練施設で開発された。
  • 日本では環境省が「暑さ指数」として普及させ、熱中症警戒アラートの基準に用いている。

湿球黒球温度(しっきゅうこっきゅうおんど、英: Wet-Bulb Globe Temperature, WBGT)は、酷暑環境下での行動に伴う熱中症のリスクを判断するために用いられる指標です。日本では環境省により暑さ指数とも呼ばれています。

指標の構成と計算

WBGTは、人体の熱収支に大きな影響を与える「湿度」「輻射熱」「気温」の3要素を反映しています。湿球温度と黒球温度を用いることで、気流の影響も考慮されています。算出には以下の式が用いられます。

WBGTの算出式
WBGTの算出式(屋外用)

また、日射のない室内などでは、より簡略化された以下の式が用いられることもあります。

室内用WBGT算出式
WBGTの算出式(室内用)

歴史的背景

WBGTは1954年、アメリカ海兵隊のパリス・アイランド訓練所において、新兵の熱中症リスクを事前に判断する目的で開発されました。高温多湿な環境下での訓練において効果的な予防措置として導入され、その後、労働環境やスポーツ現場など、国際的に広く利用されるようになりました。ISO 7243やJIS Z 8504として規格化されています。

WBGTを測定する米軍隊員
フロリダの訓練施設でWBGTを測定するアメリカ海軍の隊員

日本における活用と警戒アラート

日本では、気象庁と環境省が連携し、熱中症予防のための情報提供を行っています。WBGTが一定の基準値を超えると予測される場合に「熱中症警戒アラート」や「熱中症特別警戒アラート」を発表し、注意を呼びかけています。

実況値の公表にあたっては、観測地点の気温、湿度、全天日射量、平均風速を用いた推定式が活用されています。

WBGT実況推定式
実況推定値の算出式

熱中症予防指針

日本生気象学会などが公開する指針では、WBGTの値に応じて運動や作業の制限レベルが設定されています。例えば、WBGTが31.0°C以上の場合は「危険」とされ、原則として運動を中止することが推奨されています。

室内WBGT推定表
日射や発熱体のない室内におけるWBGTの推定表

よくある質問

WBGTと気温は何が違いますか?
気温は空気の温度のみを示しますが、WBGTは湿度や輻射熱、気流の影響を含めて算出されるため、人体が感じる熱ストレスをより正確に評価できます。
熱中症警戒アラートはいつ発表されますか?
WBGTが33°C以上になると予測される場合に発表されます。さらに危険度が高い場合は、35°C以上を基準とする熱中症特別警戒アラートが発表されます。
室内でも熱中症に注意が必要ですか?
はい。室内でも湿度や室温が高い場合は熱中症のリスクがあります。日本生気象学会などが公開する推定表を用いて、室内環境のWBGTを確認することが推奨されます。

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熱中症気象庁環境省日本生気象学会

参考文献

  • 環境省熱中症予防情報サイト「暑さ指数(WBGT)について学ぼう」
  • 日本生気象学会「熱中症予防研究委員会」
  • 小野雅司, 登内道彦「通常観測気象要素を用いた WBGT(湿球黒球温度)の推定」日本生気象学会雑誌, 2014年