北欧神話

北欧神話における宇宙を支える巨樹 ユグドラシルの全貌

北欧神話における宇宙を支える巨樹 ユグドラシルの全貌
北欧神話に登場する巨大な世界樹ユグドラシルの特徴、名称の由来、世界観の構造、および類似する文化圏の伝承について詳しく解説します。

📌 主なポイント

  • ユグドラシルは北欧神話において九つの世界を内包する巨大な世界樹である。
  • 名称の原義は、主神オーディンの異名に由来する「恐るべき者の馬(Ygg's horse)」とする説が有力視されている。
  • ザクセン人の信仰においては、類似した神木として「イルミンスール」が存在していたことが記録されている。

ユグドラシル(古ノルド語: Yggdrasill)は、北欧神話に登場する巨大な架空の木であり、宇宙や世界そのものを体現する存在として描かれる。英語では「ワールド・ツリー(World tree)」、日本語では「世界樹」あるいは「宇宙樹」とも称される。

北欧神話における世界図 中心の木がユグドラシルである。『スノッリのエッダ』の英語訳本(1847年)の挿絵。
北欧神話における世界図 中心の木がユグドラシルである。『スノッリのエッダ』の英語訳本(1847年)の挿絵。

名称の由来

「Yggdrasill」という名称の原義については複数の説が存在するが、有力な解釈では「Yggの馬(Ygg's horse)」を意味するとされている。「Yggr」および「Ygg」は主神オーディンの数ある異名の一つであり、「drasill」は馬を意味することから、オーディンに結びついた名称として解釈されている。

構造と九つの世界

ユグドラシルは、アースガルズ、ミズガルズ、ヨトゥンヘイム、ヘルヘイムといった九つの世界を内包する巨大な木として位置づけられている。その巨木は三つの根によって支えられており、『グリームニルの言葉』などの古ノルド語文献によれば、それぞれの根の下にはヘルヘイム、霜の巨人たちの領域、そして人間の住む世界などが広がっているとされる。

ユグドラシルと、そこに棲みつく様々な生き物達 17世紀、アイスランドの写本『AM 738 4to』の中の1図。
ユグドラシルと、そこに棲みつく様々な生き物達 17世紀、アイスランドの写本『AM 738 4to』の中の1図。

樹木に棲まう動物たち

ユグドラシルの幹や枝、根には数多くの生物が棲息しており、それぞれが独自の役割を持っている。木の頂きには一羽の大鷲が留まっており、その眼の間には鷹が止まっているとされる。また、栗鼠のラタトスクが各世界の間を往復し、情報を伝えるメッセンジャーとして活動している。

一方で、根の部分は大蛇ニーズヘッグによって絶えず齧られているほか、四頭の牡鹿が樹皮を食料として食べていることが伝えられている。

類似の伝承

ゲルマン系のザクセン人が崇拝していた「イルミンスール(Irminsul)」は、ユグドラシルと類似した世界樹の信仰形態であると考えられている。カール大帝の記録によれば、ザクセン戦争の初期である772年あるいはその翌年に、エレスブルクにてこの神木が伐り倒されたと伝えられている。

よくある質問

ユグドラシルとは何ですか?
北欧神話に登場する巨大な世界樹であり、アースガルズやミズガルズなど九つの世界を内包する宇宙の象徴とされています。
ユグドラシルという名前の由来は何ですか?
有力な説では「Yggの馬(Ygg's horse)」を意味するとされ、「Ygg」は主神オーディンの異名を指しています。
ユグドラシルにはどのような動物が棲んでいますか?
頂上の大鷲や鷹、世界間を往復する栗鼠のラタトスク、根を齧る大蛇ニーズヘッグ、樹皮を食べる四頭の牡鹿などが伝えられています。

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参考文献

谷口幸男訳『エッダ 古代北欧歌謡集』新潮社、1973年。
下宮忠雄、金子貞雄『古アイスランド語入門』大学書林、2006年。