有鉛ガソリンの歴史と環境影響

📌 主なポイント
- ✓有鉛ガソリンは、エンジンのノッキングを防ぐためにテトラエチル鉛などのアルキル鉛を添加した燃料である。
- ✓1921年に米国の研究者トマス・ミジリーによってガソリンへの添加効果が発見された。
- ✓日本では1975年にレギュラーガソリンの完全無鉛化が達成され、1987年までにハイオクも含めて無鉛化された。
- ✓国連環境計画(UNEP)の主導による世界的な全廃の取り組みにより、2021年7月に世界最後の使用国であったアルジェリアで販売が終了した。
有鉛ガソリン(ゆうえんガソリン)は、アンチノック剤としてアルキル鉛などの鉛化合物を微量添加したガソリンの総称であり、「加鉛ガソリン」とも称される。
レシプロエンジンのノッキングを防止する効果があり、無鉛ガソリンと比較してオクタン価を5から15程度向上させることができた。代表的な添加物であるテトラエチル鉛をはじめとするアルキル鉛は、いずれも猛毒物質であり、呼吸や皮膚接触によって体内に吸収されることで中枢神経系の鉛中毒症状を引き起こす。
開発の経緯と普及
1921年12月、米国のゼネラルモーターズ(GM)の子会社であったデイトン・リサーチ・ラボラトリーに勤務していたトマス・ミジリーが、テトラエチル鉛をガソリンに添加することでエンジンのノッキングが防止できる事を発見した。当時のデイトン社は呼称として「エチル」を用いたが、当初は鉛が添加されている事実を公表していなかった。
その後、GMはデュポン社と共同で量産体制を進めたが、製造工場において鉛中毒による死者が相次いだため、デュポンは撤退した。1924年にはロックフェラー率いるスタンダード石油と組んでエチル・ガソリン・コーポレーションを設立し、高温でのエチルクロライド製法を用いた量産化が図られたが、ここでも初期の段階で作業員に死者が発生する事態となった。こうした経緯を経て製造された有鉛ガソリンは、第二次世界大戦中から1970年代頃にかけて自動車用燃料として世界中に広く普及することになった。
日本における廃止と社会的影響
日本では、1971年度末までに製造された国内向けのガソリンエンジン自動車はすべて有鉛ガソリン仕様であった。1970年5月に発生した「牛込柳町鉛中毒事件」を契機として大気中の鉛汚染や健康被害に対する懸念が急激に高まり、政府や関係省庁は自動車排気ガスの無鉛化にかじを切ることとなった。
これに伴い、日本国内では1975年に自動車用レギュラーガソリンの完全無鉛化が達成され、ハイオクガソリンについても1987年までに完全に無鉛化された。揮発油等品質確保法に基づき、現在では日本国内における自動車用有鉛ガソリンの販売は禁止されている。

世界的な全廃
自動車用有鉛ガソリンは、長年にわたり大気汚染の主要因の一つとされてきた。米国では大気浄化法に基づき1995年に規制された。国連環境計画(UNEP)主導による世界的な無鉛化の取り組みが進められた結果、2021年7月にアルジェリアでの販売が終了したことを最後に、世界中のすべての国と地域において自動車用有鉛ガソリンの全廃が達成された。
一方で、ガソリンエンジンを動力源とする航空機向けの燃料(アブガス)など、一部の特殊な分野においては依然として有鉛ガソリンが使用されている。
よくある質問
有鉛ガソリンとは何ですか?
なぜ有鉛ガソリンは廃止されたのですか?
日本での有鉛ガソリンの完全無鉛化はいつ行われましたか?
現在でも有鉛ガソリンは使われていますか?
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参考文献
- 赤塚京治「四アルキル鉛中毒 -とくに四エチル鉛の製造, 四アルキル鉛の運搬, 使用に関する現場経験と四アルキル鉛中毒の実験的研究体験について-」産業医学、1973年。
- CNN 「99年続いた車の有鉛ガソリン使用、世界で撤廃完了 国連環境計画」 2021年8月31日。
- Jamie Lincoln Kitman, “The Secret History of Lead”, The Nation, 2002.