無機化学

水酸化亜鉛の化学的性質と合成

水酸化亜鉛の化学的性質と合成
水酸化亜鉛(Zn(OH)2)の化学的性質、合成方法、結晶構造、および両性化合物としての反応性について解説します。

📌 主なポイント

  • 化学式は Zn(OH)2 であり、白色の粉末状固体である。
  • 両性化合物であり、酸および強塩基の両方に溶解する。
  • アンモニア水に溶解し、テトラアンミン亜鉛錯体を形成する。
  • 125℃程度の加熱により脱水し、酸化亜鉛へと分解する。

水酸化亜鉛(Zinc hydroxide)は、化学式 Zn(OH)2 で表される亜鉛の水酸化物です。白色の粉末状固体であり、水には極めてわずかにしか溶解しませんが、酸や強塩基、アンモニア水に対しては特有の反応を示します。

合成方法

水酸化亜鉛は、亜鉛塩の水溶液から沈殿させることで得られます。硫酸亜鉛などの亜鉛塩を含む水溶液に、適切な量の水酸化ナトリウム水溶液を加えると、無定形の白色コロイド状沈殿が生成されます。

水酸化亜鉛の沈殿反応式
亜鉛イオンと水酸化物イオンによる水酸化亜鉛の生成反応

また、酸化亜鉛を熱濃水酸化ナトリウム水溶液に溶解させた後、希釈して長期間放置することで、ε-相(イプシロン相)と呼ばれる結晶性の高い水酸化亜鉛を得ることが可能です。

酸化亜鉛の溶解反応
酸化亜鉛が強塩基に溶解してテトラヒドロキシド亜鉛酸イオンを生成する反応
テトラヒドロキシド亜鉛酸イオンの平衡
テトラヒドロキシド亜鉛酸イオンと水酸化亜鉛の平衡関係

アンモニアを用いた合成では、硫酸亜鉛溶液にアンモニア水を加えて一度沈殿を生じさせ、それを濃アンモニア水に溶解してアンミン錯体とした後、乾燥過程でアンモニアと水を徐々に除去することで結晶を析出させます。

アンモニアによる沈殿生成
亜鉛イオンとアンモニアによる水酸化亜鉛の生成
アンミン錯体の生成
水酸化亜鉛がアンモニアに溶解してテトラアンミン亜鉛イオンを生成する反応
アンミン錯体からの沈殿
テトラアンミン亜鉛イオンから水酸化亜鉛が再生成される反応

化学的性質と構造

水酸化亜鉛には、非晶質のものの他に、α、β、γ、δ、εの5種類の同質異像が存在するとされています。その中で、斜方晶系のε-相が最も安定な構造です。ε-相の結晶構造は、OH基を共有するZn(OH)4四面体を基本単位として構成されています。

化学的には両性化合物としての性質を持ち、酸に溶けて亜鉛イオンを生じるほか、強塩基水溶液にはテトラヒドロキシド亜鉛酸イオン [Zn(OH)4]2- を生成して溶解します。

両性反応
水酸化亜鉛が強塩基に溶解する反応

また、アンモニア水には正四面体型4配位のテトラアンミン亜鉛イオン [Zn(NH3)4]2+ を生成して溶解します。

アンモニアへの溶解
水酸化亜鉛がアンモニア水に溶解する反応

熱的には不安定であり、125℃程度に加熱すると分解し、脱水して酸化亜鉛(ZnO)となります。

熱分解反応
水酸化亜鉛の熱分解による酸化亜鉛の生成

よくある質問

水酸化亜鉛は水に溶けますか?
水酸化亜鉛は水に対して極めてわずかにしか溶解しません。
水酸化亜鉛はどのような物質に溶けますか?
希酸、強塩基水溶液、およびアンモニア水に溶解します。
水酸化亜鉛を加熱するとどうなりますか?
125℃程度に加熱すると分解し、水を失って酸化亜鉛(ZnO)になります。

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参考文献

日本化学会編 『新実験化学講座 無機化合物の合成I』 丸善、1977年。 日本化学会編 『化学便覧 基礎編 改訂4版』 丸善、1993年。 Perrin, D. D., ed (1982). Ionisation Constants of Inorganic Acids and Bases in Aqueous Solution. IUPAC Chemical Data (2nd ed.). Pergamon.