硫酸アンモニウムの化学的性質と用途に関する総合解説

📌 主なポイント
- ✓硫酸アンモニウムの化学式は (NH4)2SO4 であり、一般に「硫安」と呼ばれる。
- ✓水に非常に溶けやすく、エタノールやアセトンには不溶である。
- ✓主な用途には窒素肥料、生化学における塩析、スノーセメントなどがある。
- ✓2018年度の日本国内生産量は約91万トンである。
硫酸アンモニウム(りゅうさんアンモニウム、英: ammonium sulfate)は、硫酸のアンモニウム塩であり、化学式 (NH4)2SO4 で表される無機化合物である。一般には硫安(りゅうあん)という略称でも広く知られている。古くは天然鉱物であるマスカグナイト(mascagnite)としても産出することが知られている。


化学的および物理的性質
硫酸アンモニウムは無色の直方晶系の結晶または白色の吸湿性顆粒として存在する。水に非常に溶けやすい性質を持ち、0 °Cでは水100gに対して70.6g、20 °Cでは74.4g、100 °Cでは103.8gが溶解する。一方で、アセトンやエタノール、ジエチルエーテルにはほとんど溶けない。密度は 1.77 g/cm3 である。
加熱した場合には、120 °C前後から分解を始め、高温下ではアンモニアを放出して分解・融解する。
製造方法と分類
硫酸アンモニウムの製造方法は、そのアンモニウムの供給源やプロセスによって主に「合成硫安」「回収硫安」「副生硫安」の3種類に大別される。
- 合成硫安: 合成アンモニアと硫酸を直接中和反応させて製造されるもので、最も一般的な手法である。石膏や亜硫酸ガスを副次的に利用して合成されるケースもある。
- 回収硫安: ナイロンの原料となるカプロラクタムの製造過程などで発生する廃液から回収されるもの。
- 副生硫安: 製鉄所などにおける石炭の乾留(コークス製造)の際に副生するアンモニアを、硫酸に吸収させることで得られる。
主な用途
農業用肥料
かつては代表的な窒素肥料の1つとして大量に用いられてきた。即効性がある反面、作物が窒素分を吸収した後に硫酸イオンが残留し、土壌が酸性化しやすいという特徴を持つ。さらに、特定の土壌条件下では残留した硫酸イオンに起因して有害な硫化水素が発生し、作物の根や地上部を傷めるリスクがあるため、現代の農業においては尿素などがより多く使用される傾向にある。
生化学における塩析
生化学の分野では、タンパク質を水溶液から分離・沈殿させる目的(硫安分画または塩析と呼ばれる手法)で用いられる。
その他の用途
スキー場において、シャーベット状になった雪を固めてコンディションを維持するためのスノーセメントとして使用される事例があるものの、これが水質汚濁の原因になることが指摘されている。また、消火剤の成分として利用されるほか、水に溶解する際の吸熱反応を利用して冷却材や保冷剤の用途に供されることもある。

生産および流通動向
経済産業省の生産動態統計年報(化学工業統計編)によると、2018年度における日本国内の硫酸アンモニウムの生産量は 911,477 トンであり、そのうち副生硫安の生産量は 233,420 トンを占めている。歴史的な生産高としては、第二次世界大戦前の1941年に124万トンを記録したことが知られている。
よくある質問
硫酸アンモニウムの別名や通称は何ですか?
硫酸アンモニウムが農業肥料として使われる際の注意点は何ですか?
生化学実験における硫安の役割は何ですか?
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参考文献
- Lide, David R., ed (2006). CRC Handbook of Chemistry and Physics (87th ed.). Boca Raton, FL: CRC Press. ISBN 0-8493-0487-3
- 村上哲生, 服部典子, 舟橋純子 ほか、「スキー場を集水域に持つ渓流に見られる窒素汚染」 『応用生態工学』 2003年 6巻 1号 p.45-50, doi:10.3825/ece.6.45
- 経済産業省生産動態統計年報 化学工業統計編