農業・産業
牧畜の歴史と社会構造の基礎知識

家畜を養育して生活の糧とする牧畜の基礎知識、歴史、遊牧や牧草地、ローカル・コモンズに関する社会学的特徴について詳しく解説します。
📌 主なポイント
- ✓牧畜は、ウシやヒツジなどの家畜を養育して乳や肉、皮革などを得る生業である。
- ✓紀元前5000年頃の新石器時代の古代エジプトなどですでに牧畜が行われていた。
- ✓牧草地には私有地のほか、地域コミュニティによって管理されるローカル・コモンズが存在する。
牧畜(ぼくちく)とは、ウシやヒツジ、ウサギなどの家畜を人工的に養育して数を増やし、その乳や肉、それらの加工保存食、皮革や羊毛といった家畜の身体に由来する生活用具を主たる生活の糧とする生業を指す。特定の居住地を定めずに季節や天候に応じて家畜を引き連れて移動する牧畜生活は遊牧と呼ばれ、牧畜を主体とする社会は牧畜社会と総称される。
地理的環境と家畜の選択
牧畜社会は、人口密度の低い山岳部や半砂漠地帯、大草原地帯など、通常の農耕では食糧需要を満たしにくい場所で営まれることが多い。乾燥や寒冷といった土地ごとの気候条件に適した家畜が選択され、例えば乾燥が激しいサハラ砂漠周縁部ではラクダが、寒冷なアラスカやシベリアなどではトナカイが飼育される。

牧畜の起源と歴史
牧畜の歴史は古く、農耕とならんで紀元前5000年頃の新石器時代の古代エジプトなどですでに営まれていた。動物を対象とする狩猟とは異なり、定常的に動物と接する牧畜は文化的・技術的に大きな隔たりがある。最初に家畜化された動物はイヌであるが、牧畜を目的とした最初の家畜はヤギやヒツジであると考えられている。また、牧畜に特化したイヌの品種として牧羊犬(コリーやシェパードなど)が生み出された。
牧草地とローカル・コモンズ
家畜のエサとなる牧草が生育している土地、あるいは栽培されている土地は牧草地と呼ばれる。牧草地は、牧場主や企業が所有する私的なものと、地域住民に広く開放されている共有のものとに二分される。歴史的には自然地形を利用した共有の放牧地が主流であったが、現在の発展途上国における牧畜でも、地域コミュニティや自然地形を利用した共有の牧草地は重要な役割を果たしている。こうした牧草地は、地域社会のメンバーが利用・管理するローカル・コモンズとしての性格を持っている。
よくある質問
牧畜と遊牧の違いは何ですか?
牧畜は家畜を飼育して生活の糧とする生業全体の総称であり、そのうち特定の居住地を定めず季節や天候に応じて移動する形態を遊牧と呼びます。
牧畜の歴史はいつ頃から始まっていますか?
農耕とならんで紀元前5000年頃、新石器時代の古代エジプトなどですでに営まれていたことが確認されています。
ローカル・コモンズとは何ですか?
地域コミュニティのメンバーが利用し、自然地形などを利用しながら共同で管理する共有の牧草地などを指します。
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参考文献
R・E・ニスベット、D・コーエン『名誉と暴力:アメリカ南部の文化と心理』石井敬子、結城雅樹(編訳) 北大路書房 2009年 ISBN 9784762826733 pp.9-16.