植物学
植物の生体液:導管液と篩管液の役割と利用

植物の生体液(サップ)の定義、導管液や篩管液といった主要な成分の役割、および人間による利用や動物との関わりについて解説します。
📌 主なポイント
- ✓植物生体液には、導管液、篩管液、乳液、樹脂などが含まれる。
- ✓導管液は根から吸収した水と養分を運び、篩管液は光合成産物を転流させる。
- ✓人間は樹液を食料、塗料、接着剤、医薬品など多様な用途に利用してきた。
- ✓アブラムシなどの昆虫は、植物の篩管液を栄養源として利用する。
植物生体液(英語: Sap)は、植物の体内を循環する液体成分の総称です。特に樹木から分泌されるものは一般的に「樹液」と呼ばれます。これらの液体は、植物の栄養輸送や防御機構において重要な役割を果たしています。
主要な生体液の種類
植物の体内には、その機能や流れる組織によって異なる種類の液体が存在します。
- 導管液(道管液):根から吸収された水や無機養分を植物体の上部へ運ぶ導管を流れる液体です。
- 篩管液:光合成によって作られた糖などの有機養分を、植物体全体へ転流させる篩管を流れる液体です。
- 乳液:乳管と呼ばれる組織に蓄えられる液体で、防御物質などを含みます。
- 樹脂:樹脂道に蓄えられる粘性の高い物質で、傷口の保護や防虫の役割を担います。

植物における役割
生体液は、植物の生存に不可欠な栄養移動を担うだけでなく、動物による食害に対する防御機構としても機能します。例えば、傷口から分泌される樹脂や乳液は、物理的な封鎖や化学的な忌避物質として作用し、昆虫や病原菌の侵入を防ぎます。

人間による利用
古来より、人間は植物の生体液を多様な目的で利用してきました。
- 食料・飲料:メープルシロップやアガベシロップ、パームシロップなどは、樹液を濃縮・加工して作られます。また、白樺の樹液などは飲料として直接利用されることもあります。
- 工業原料:天然ゴム(ラテックス)は、ラバータッピングという手法で採取されます。また、漆は塗料や接着剤として古くから利用されています。
- 医薬品・接着剤:コパイバの樹液などは、伝統的に抗炎症作用を持つ薬として利用されてきました。また、古代には樹液が接着剤として利用されていた記録もあります。

動物との関わり
樹液を主食とする動物や昆虫も存在します。キツツキ科の鳥類やアブラムシなどの昆虫は、植物の組織に口器を突き刺して生体液を摂取します。特にアブラムシは、篩管液を摂取する際に体外へ甘露を分泌することが知られています。研究分野では、アブラムシの口針をレーザーで切断して篩管液を採取する「アブラムシ技法」が用いられることもあります。

よくある質問
樹液と植物生体液の違いは何ですか?
植物生体液は植物体内の液体全般を指す広義の言葉であり、樹液はその中でも特に樹木から分泌される液体を指す言葉です。
なぜ植物は樹液を出すのですか?
栄養の輸送だけでなく、傷口を保護したり、化学物質を放出して外敵から身を守る防御機構としての役割があります。
アブラムシ技法とは何ですか?
アブラムシが植物の篩管に口針を突き刺して栄養を摂取している最中に、その口針をレーザーで切断し、漏れ出した篩管液を採取する研究手法です。
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参考文献
- 米山忠克他「作物生体液(導管液, 葉柄汁液, 葉身汁液)の微量要素濃度」『日本土壌肥料学雑誌』68(5), 1997.
- 鎌田直人「保全講座3 : 昆虫による加害と植物による防御 (II)」『樹木医学研究』13(1), 2009.
- 日本植物生理学会「植物 Q&A 樹液について」みんなのひろば.
- 茅野充男他「4. 篩管による物質転流と生長」『化学と生物』26(5), 1988.