栄養学・生物学

脂肪の科学と栄養学における役割

脂肪の科学と栄養学における役割
生物学における脂肪の性質、生体での利用、そして栄養学的な脂肪酸の分類や摂取基準について解説します。

📌 主なポイント

  • 脂肪の主成分は、グリセロールに脂肪酸がエステル結合したトリアシルグリセロールである。
  • 脂質は炭水化物やタンパク質とともに三大栄養素の一つであり、重要なエネルギー源および生体組織の構成材料となる。
  • 動物性油脂には飽和脂肪酸が多く、植物性油脂や魚類脂肪には不飽和脂肪酸が多く含まれる傾向にある。

脂肪(しぼう)は、物性上の本来の意味では油脂のうち常温で固体のものを指しますが、栄養学上では広義に中性脂肪や複合脂質、ステロール類など有機溶媒に溶ける一群の有機化合物(脂質)の総称として用いられます。狭義には中性脂肪のみを指す場合もあります。

化学的構造と性質

脂肪の主成分はトリアシルグリセロール(トリグリセリド)であり、グリセロールの3つの水酸基に脂肪酸がエステル結合した構造をしています。構成する脂肪酸は、炭素数や二重結合の位置・数によって多様性に富んでいます。

  • 飽和脂肪酸:二重結合をもたない脂肪酸。動物性の油脂に多く含まれ、常温で固体のものが多い特徴があります。
  • 不飽和脂肪酸:二重結合をもつ脂肪酸。植物の油脂や魚類の脂肪に多く含まれ、常温で液体のものが多い傾向にあります。

生体での利用と代謝

脂質は、炭水化物およびタンパク質と共に「三大栄養素」の一つであり、生命活動のエネルギー源および組織の構築材料となります。単位重量あたりのエネルギー量は炭水化物などに比べて非常に大きく、疎水性であるため水分子と結合して存在しない点も特徴です。

生体内においてエネルギーが必要になると、脂肪細胞に蓄積されていた脂肪が脂肪酸とグリセロールに加水分解され、血中に放出されます(脂肪動員)。放出された脂肪酸は血中のアルブミンと結合して各組織に運ばれ、ミトコンドリアで酸化されてエネルギーを生成します。

栄養学と食事摂取基準

食事中の脂肪(食事脂肪)と健康リスクに関する研究は長年にわたり行われてきました。かつては総脂肪の摂取量を一律に抑える指導が行われていましたが、科学的検証の蓄積により、脂肪の種類(飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の区別など)に応じた評価の重要性が認識されるようになっています。

タンパク質・脂肪・炭水化物のカロリーベースでの摂取バランスはPFCバランスと呼ばれ、各国の栄養指針や世界保健機関(WHO)などの国際機関によって推奨値が示されています。

よくある質問

脂肪と脂質の違いは何ですか?
栄養学上、脂質は有機溶媒に溶ける一群の有機化合物の総称であり、広義には脂肪と同義に扱われますが、狭義には脂肪は中性脂肪を中心とした物質を指します。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の違いは何ですか?
分子構造内に二重結合をもたないものが飽和脂肪酸、二重結合を一つ以上持つものが不飽和脂肪酸です。前者は常温で固体であることが多く、後者は液体であることが多いという物性の違いがあります。
PFCバランスとは何ですか?
タンパク質(Protein)、脂肪(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)の3大栄養素が、カロリーベースでどのような割合で摂取されているかを示すバランスのことです。

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参考文献

  • 大隅 隆「脂肪の代謝とその調節 ―からだのエネルギーバランス―」 - 兵庫県立大学 理学部 大学院 理学研究科
  • 日本栄養士会 脂肪解説
  • 亀井 正治「食事脂肪 と血清脂質─動脈硬化を防ぐ食生活をめざして─」『生活衛生』第37巻第5号、1993年、197-213頁。