自然科学

蒸気と気体の科学的定義および歴史的変遷

物質が液体から蒸発あるいは固体から昇華して気体となった状態である蒸気について、科学的概念の歴史や用語の変遷、主な用途を解説します。

📌 主なポイント

  • 蒸気とは、物質が液体からの蒸発や固体からの昇華によって気体になった状態を指す。
  • 近代の日本語訳語としての「蒸気」は、1810年に杉田玄白が『形影夜話』でオランダ語の訳語として用いたことに由来するとされる。
  • 歴史的には、冷却により凝縮するものを蒸気、凝縮しないものをガスと区別する考え方が存在した。

蒸気(じょうき、英: vapor, vapour)とは、物質が液体から蒸発して、あるいは固体から昇華して気体になった状態のものを指す。また、水蒸気(steam)の略語として用いられることもある。

概念の歴史と科学的定義

蒸気という概念は近代科学の発展に伴って生まれたものであり、多くの言語において湯気から派生した言葉が当てられている。例えばタイ語では「アイナム」と呼ばれ、蒸気と水蒸気、湯気の区別が存在しない。

歴史的には、冷却しても凝縮しないものをガス(永久気体)、凝縮するものを蒸気と区別する考え方があった。マイケル・ファラデーやジョン・ドルトンらは1820年頃から「すべての気体は液体が蒸発した蒸気である」と主張し、気体は冷却すれば必ず液化すると考えていた。マイケル・ファラデーの著書『ロウソクの科学』(1861年発行)の第二講冒頭部には、蝋の蒸気の説明に関連して「ガスは永久的(に気体)ですが蒸気は凝縮します」という註釈が記されている。現在では、物質が臨界点を下回っていればすべての気体は液化し得ることが分かっている。

日本語における「蒸気」の語源

日本語の近代訳語としての「蒸気」は、19世紀初頭に杉田玄白らの蘭学者によって、既存の漢語を借用する形で用いられるようになったと考えられている。杉田玄白は1810年の『形影夜話』上篇において、オランダ語の「オイトワアツセミング(uitwaseming、皮膚などからの蒸発気化を意味する)」の訳語として「蒸気」を当てた。

主な用途

蒸気は、エネルギー変換や工業プロセスなど、多様な分野で利用されている。

  • 蒸気機関および蒸気機関車:熱エネルギーを機械的仕事に変換する。
  • 蒸気タービン:発電プラントなどでタービンを駆動するために用いられる。
  • 蒸気圧縮冷凍機:冷媒の相変化を利用した冷却システム。
  • 製紙業:化学パルプの製造工程において、木材チップを蒸解して繊維を取り出すために利用される。

よくある質問

蒸気とガスの違いは何ですか?
歴史的には冷却によって凝縮するものが蒸気、凝縮しないものがガスと区別されていましたが、現代の科学においては臨界点との関係で理解されています。
日本語の「蒸気」という言葉はいつ頃から使われていますか?
19世紀初頭、1810年に杉田玄白が『形影夜話』の中でオランダ語の訳語として使用したことが近代における始まりと考えられています。
英語の「steam」と「vapor」の違いは何ですか?
steamは主に湯気を指し、vaporは揮発に近い広い意味での蒸気を指すとされています。

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相転移蒸気圧気体蒸発

参考文献

阿川修三「翻訳語「蒸気」の形成についての試論」文教大学大学院言語文化研究科付属言語文化研究所、2023年11月30日閲覧。
石田博幸、木村久美子「ブラジルとアジア諸国の科学用語比較」、2023年11月30日閲覧。
The Chemical History of a Candle/Lecture II, ウィキソース。
化学パルプ工程 チップを煮込んで繊維を取り出す, 日本製紙グループ、2020年11月1日閲覧。