物理学

仕事関数:物質表面の電子放出における物理的エネルギー障壁

仕事関数:物質表面の電子放出における物理的エネルギー障壁
物質表面から電子を無限遠まで取り出すのに必要な最小エネルギーである仕事関数の定義、性質、測定方法について解説します。

📌 主なポイント

  • ✓仕事関数は物質表面から1個の電子を無限遠まで取り出すのに必要な最小エネルギーである。
  • ✓絶対零度において、仕事関数は真空準位とフェルミ準位のエネルギー差に等しい。
  • ✓金属元素表面での仕事関数はおよそ2〜6 eVの範囲にあり、セシウムが最小値(1.93 eV)を示す。

仕事関数(しごとかんすう、英: work function)は、物質表面において、表面から1個の電子を無限遠まで取り出すのに必要な最小エネルギーのことである。

定義とエネルギー準位

電子がN+1個ある表面系の基底状態の全エネルギーをEtot(N+1)とし、この表面系から電子を1個無限遠方まで取り出し、電子がN個になったときの全エネルギーをEtot(N)、無限遠方にある電子状態を真空準位V(∞)とすると、仕事関数Wは次のように表される。

仕事関数のエネルギー関係を示す数式
仕事関数のエネルギー関係を示す数式

化学ポテンシャルをμとすると、Nが十分大きければ次の関係が成り立つ。

化学ポテンシャルと全エネルギーの関係式
化学ポテンシャルと全エネルギーの関係式

これにより、仕事関数は以下のように書き換えられる。

化学ポテンシャルを用いた仕事関数の表現
化学ポテンシャルを用いた仕事関数の表現

絶対零度(T = 0 K)の場合、フェルミ準位εFと化学ポテンシャルは一致するため、仕事関数は真空準位とフェルミ準位のエネルギー差となる。

フェルミ準位と化学ポテンシャルの等価性を示す式
フェルミ準位と化学ポテンシャルの等価性を示す式

物理的性質

真空準位は常にフェルミ準位より高い位置にあり、負の仕事関数をとることはない。金属元素表面での仕事関数はおよそ2から6 eVの範囲にあり、金属単体で最も小さいのはセシウムの1.93 eVである。

仕事関数の値は、表面の原子の種類、結晶面の方位、表面構造、および他の原子の吸着状態などに強く依存する。そのため、表面物理学において物質表面の状態を評価するための重要な物理量として用いられる。

測定方法

実験的な測定手法としては、ケルビン法(振動容量法)、熱電子放出の観測、あるいは光電子放出実験などが挙げられる。

熱電子放出強度Iと仕事関数Wの間にはリチャードソンの式が成り立ち、温度依存性を測定することで仕事関数を算出できる。

熱電子放出強度と仕事関数の関係式
熱電子放出強度と仕事関数の関係式

よくある質問

仕事関数とは何ですか?
物質表面から1個の電子を無限遠方まで取り出すのに必要な最小エネルギーのことです。
仕事関数はどのように測定されますか?
ケルビン法(振動容量法)、熱電子放出実験、光電子放出実験などを用いて測定されます。
仕事関数が最も小さい金属は何ですか?
金属単体ではセシウムが最も小さく、その値は1.93 eVです。

関連記事

表面物理学物性物理学フェルミ準位熱電子放出光電効果

参考文献

Herbert B. Michaelson, "The work function of the elements and its periodicity". J. Appl. Phys. 48, 4729 (1977).