食品と食料の定義・分類・歴史的背景に関する総合解説

📌 主なポイント
- ✓日本の食品衛生法第4条において、食品とはすべての飲食物(医薬品・医薬部外品等を除く)を指すと規定されている。
- ✓コーデックス食品分類システム(FCS)では、世界共通の基準として食品を16種類の大分類に分けている。
- ✓食品の価値評価において、健康や生命に影響を与える「安全的価値」が最も重要視される。
- ✓人類の歴史において、火の利用や農耕・牧畜の開始、および新旧大陸間の動植物の交流(コロンブス交換)が食品の多様化を大きく推進した。
食品(しょくひん)またはフード(英: food)とは、人が食べるために直接使用できる、食用可能な状態のものを指す。人間が日常的に食物として摂取するものの総称であり、食料品とも呼ばれる。
用語の定義と概念の差異
「食糧」「食品」「食物」といった近接した意味を持つ用語が存在するが、それぞれニュアンスや対象とする段階が異なる。おおむね、「食糧」は食品よりも生産や材料寄りの概念を指し、食物は食品が調理されたものを意味することが多い。例えば、イネから収穫された直後の米は「食糧」の範疇に含まれるが、精米されると「食品」となり、それを炊飯して調理された状態のものは「ご飯」という「食物」になる。ただし、「食物」という表現は指す範囲が必ずしも厳密ではなく、漠然と用いられる傾向にある。
法制度上の定義
日本における定義
日本の食品衛生法第4条においては、食品とは「全ての飲食物をいう。ただし、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に規定する医薬品、医薬部外品及び再生医療等製品は、これを含まない。」と規定されている。食品安全基本法第2条における「食品」の定義も同様の枠組みを採用している。
米国における定義
米国の制度上の分類では、食品及び栄養摂取の目的で口から入るものについて、主に保健福祉機構のアメリカ食品医薬品局(FDA)の食品安全・応用栄養センターが所管している。
食品の分類体系
食品は、その利用目的、加工状態、栄養学的特性などに応じて多様な分類がなされている。主な分類方法は以下の通りである。
- 大別的分類:植物性食品、動物性食品、合成食品
- 細分的分類:穀類、種実類、芋類、豆類、キノコ類、野菜類、果実類、魚介類、鳥獣肉類、卵類、乳類、海藻類など
- 栄養学的分類:タンパク質性食品、デンプン性食品、脂肪性食品など
- 加工の有無による分類:生鮮食品、加工食品
- 食習慣上の分類:主食品、副食品、嗜好品、調味料
- 生産形態による分類:農産食品、畜産食品、水産食品、および天然品・養殖品
コーデックス食品分類システム
国際食品規格委員会によるコーデックス食品分類システム(Food Category System: FCS)では、乳製品、油脂、食用氷、果実・野菜・海藻・種実類、菓子類、穀粒・根・塊茎・豆類、ベーカリー製品、食肉・食肉製品、魚類・水産製品、卵製品、甘味料、調味料・スープ・ソース、特殊栄養用途食品、飲料、そのまま食べられる香味製品、調理済み食品の16種類に分類されている。
日本における栄養学的分類
日本では、栄養素の供給源や役割に基づく「6つの基礎食品群」による分類が広く用いられている。第1群(魚・肉・卵・大豆など、主にタンパク質)、第2群(牛乳・乳製品・海藻など、主にカルシウム)、第3群(緑黄色野菜、主にカロチン)、第4群(淡色野菜・果物、主にビタミンC)、第5群(砂糖・穀類・芋類、主に炭水化物)、第6群(油脂類、主に脂肪)に大別される。
食品の価値評価
食品は複数の価値軸によって評価・分析される。最も重要視されるのは健康や生命に直接影響を与える安全的価値である。その他、消化吸収や栄養素の含有量に関わる栄養的価値、常用することの容易性を示す経済的価値、保存や調理、運搬の簡易性に関わる実用的価値、美感や美味感といった嗜好的価値が存在する。
食品の保存
食品の保存は、品質低下の防止、生産地から遠隔地への輸送と供給の安定、衛生上の危害防止および安全の確保、そして栄養価の保持を目的として行われる。保存手法には、冷蔵、冷凍、包装、乾燥などのそのまま保存する方法のほか、塩蔵、砂糖漬け、酢漬け、醤油・味噌漬け、瓶詰、缶詰といった加工を伴う方法がある。
人類史における食品の発展
太古の人類は狩猟、漁労、採集によって食料を獲得していた。火の利用が開始されたことにより、生では食用にしなかった穀物や豆、芋などが食べられるようになり、食品の選択肢が大きく広がった。氷河時代末期には乾燥や燻製などの保存技術も存在していた。
世界各地で農耕や牧畜が始まると、それぞれの地域で動植物の栽培化・家畜化が進んだ。穀物の栽培化は特定の地域を発祥として世界へ広がり、家畜化によって肉だけでなく乳製品などの持続的な利用が可能となった。1492年のクリストファー・コロンブスによる新大陸到達以降は、旧世界と新世界の間で動植物の大規模な交換(コロンブス交換)が行われ、双方の食品の多様性が劇的に増加した。
19世紀の産業革命以降は、科学や工業力の進歩、流通システムの整備に伴って近代的食品工業や食品科学、栄養学が成立し、食品の安全規制が導入されるなど、近代的な食品供給の基盤が築かれた。